カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第133回

清ちゃんのつぶやき(その100)クランク長さ



 春の忙しい時期はメールチェックどころではなく、パソコンのスイッチを入れたままコタツで眠ってしまい朝になるといった事も珍しくなかった。ラジオや灯りもつけっぱなしである。省エネに反する生活を送っていた。メールチェックも3日に一度、10件以上溜まっていることもざらである。普段ならすぐに返事をするが、この時期、3日遅れという事もあり、非常にご迷惑をおかけしたと反省している。



 前回の東京ブレーキの項でも、以前にメールを頂いたK氏よりバンド止めのカンチブレーキのご指摘を受けた。今は懐かしいクロスボーのカンチブレーキを装備したランドナーの写真まで添付してあった。その他にもいろんな方々からメールを頂いた。その中で初メールの方でクランク長さについて書いてほしいというのがあった。確かに以前から私自身も感じていた事だし、メーカーの人にも機会があれば語っていたことである。



 またまた昔の話になるが、ロードマン時代(?)にはクランク長さは165ミリというのが一般的であった。その後、しばらくすると少し上級車になると小さいフレームサイズのものには165ミリ、大きいフレームサイズのものには170ミリを使うという良心的な車種も現れてきた。これは極、当然なことである。適正クランク長さは俗に身長の10分の1と言われている。厳密には足の長さやひざ下長さに関係してくるので同じ身長でも人によって違ってくる場合も多い。



 私自身、今は170ミリクランクを使っている。ここに至るまで約10年の年月を要した。乗り始めた頃は当然のことながら165ミリだった。学生の頃、上りを得意としていた。ある日、横尾双輪館で話していたら167.5ミリクランクを勧められた。最初は少し違和感があったが、すぐに慣れ、使い勝手がよかった。体力もあった。実はそれ以前に先輩の自転車で170ミリを体験していた。ところが半日も走ると走り終えたら膝が痛くなり、自分には合わないと感じていた。ホルクス、コルナゴ×2台、メルシェと乗り続け、すべて167.5ミリにこだわってきた。その間にもルジュンやシルクオーダー車など数台乗り続けたが、これらには165ミリや170ミリを装着して併用して使い続けていた。



 165と170、たった5ミリの差ではないか等と初めての方は思われるかもしれない。てこの原理だから長いほうが有利ではないかと考える方もおられると思う。実際、クランクが長くなると5ミリの差は上下で10ミリの差となる。ひざの屈伸量もその分大きくなる。ペダルの軌跡もクランク一回転で30ミリ程長くなる。運動量はその分増えてくる。走る距離が長くなればなるほど長いクランクでは体への負担は増えてくる。今は小学校でもウサギ跳びは禁止されている。体が出来ていない小学生には大きな屈伸運動はさせないというのが目的である。小学6年生が日本一周したといった新聞記事に大人用の自転車の写真、見たとたんにぞっとした。



 今、市場を見てみるに、最近の若者の手足が如何に長くなったとは言え、女性向けと称した小さいフレームサイズのロードレーサーやMTBに170ミリクランクはなかろうと思う。ロードレーサーならばシマノでもカタログ上は165ミリが用意されている。ところがMTBでは最小でも170ミリである。特に初心者が初めて購入するような手軽な価格帯のものは総じて170ミリである。そして肝心なのは、乗るのが若者だけではないことである。昔、乗っていたおっさん達がせっかく自転車に戻ってきたのに、乗っていたら疲れるとかひざが痛くなったとの話を聞く。体力がなくなった、運動不足だと自身は思っておられるようだが、それだけではない事は確かなようである。



 ロードでは世界的に172.5ミリが主流だと聞く。ただ、クランク長さに関しては本来、流行とかに左右されない事項である。若者だって、欧米の若者と日本の若者では手足の長さは違うはずである。自転車メーカーや部品メーカーにはそこのところ、ちょっと考えてほしいと思う。日本人に合った、日本人のための自転車作りを原点に立ち戻ってやってほしいと願っている。

第134回へ続く...

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