カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第9回

清ちゃんのつぶやき(その5)ショップ



 皆、いきつけのショップはあるだろうか?どういった基準で選んでいるのだろうか?海外ブランドの自転車が揃っている、近くにある、部品・用品の多さ、きれいな店、大きな店、いろいろあるだろうが、最後には店主だと思う。人柄、性格がいい、知識がある、技術が確か、経験が豊富といったことだろうと思う。店がきれい、汚い、展示車が多い、少ないというのは別だと考える。どうだろうか?



 個人的にいろいろなショップに行った。以前、東京に住んでいたこともあり、関東の店もよくまわった。他の道府県もレースや出張、旅行の際には時間があればショップめぐりをしていた。欧米のショップも結構行った。いろんな店と出会ったが、最後には"店主がどのくらい自転車が好きか"ということに尽きるだろうと思う。



 なぜこのような事を書くかというと、どうも最近、人間同士のつながりが希薄になっている傾向が見られるからである。確かに個性の強い店主だと、好き嫌いはある。人付き合いが下手な人も増えている。自分が嫌いなタイプの店主でも、性格はいやだが、技術は確かとか、知識は抜群だとか、それらは認めるようにする、そのことでその人自身も成長できると思うし、より自分にとっていい店にめぐり合える。インターネット等で部品を購入するのもいいが、その部品を取りつけるうえでのコツとか要領とかの情報は得られない。人が手渡しすることで得られるものも多い。



 「走ることが好き」それだけで充分である。その純真な気持ちが大切である。フレームや部品のうんちくより"走ることが楽しい"と思えること、それが一番大切なのである。そこで、いい店に出会うことによって、もっと楽しく走ることができるようになる。私的なことだが、中学生頃から自転車に目覚め、引越し等でいろいろな所に住んだ。そのたびにいい店にめぐりあったと思っている。その店の店主ばかりでない。その店で出会った他の人達、おじいちゃんと中学生が同レベルで会話ができる。すばらしいことではないだろうか。おじいちゃん、おじさん、お兄さん、お姉さん、後輩、いろんな人がいた。逆に言えば、そのことによって今の自分があると信じている。お互いに"自転車好き"という共通点さえあれば必ずいい出会いが待っている。



 もちろん、いい店との出会いのためには、店に出向かねばならない。そこでお客さまとして、人間としての最低限のマナーも大切である。



 次に店に入る場合の注意点を4つ。特に海外の店で注意すべき点である。(もちろん国内の店にもあてはまる。)これまで店に入るのに躊躇していた人たちには参考になると思う。



その1、店にはいるときにはあいさつをする。
 当然のことだが、黙って店に入ってくるお客さまと、「こんにちは」と言って来るお客さまとでは店の受け取り方が違う。特に外国人が入ってくるわけである。その国の「ありがとう」や「こんにちは」くらいは覚えておかねばならない。店主が電話中とか、他のお客さまと話している場合には会釈だけでも構わない。人と人が出会う最初のきっかけは、やはり挨拶からである。これは世の東西を問わず、全世界共通である。



その2、展示物には勝手に触れない。
 日本ではそうでもないが、欧米では特に気を使うべし。展示車によってはクランク位置まで計算して展示しているところもある。ウエアもマネキンに着せて展示してある店もある。自転車ではないが、人に頼まれて、パリに行った際、某有名ブティックにバッグを買いに行ったことがある。店に入ってしばらく見ていたら、店員から別の部屋に案内された。展示してある商品は最初の部屋と全く同じである。不思議に思ってたずねると「あの部屋は日本人の団体客や一般客専用だ」との話。「せっかく専門のデザイナーが時間をかけてディスプレーしているのに、日本人は勝手にスカーフをマネキンからはずしたり、バックを手に取ったりして、無造作に置いていったりする」と話していた。日本人の多くは金は持っているが、マナーを知らないと思われているようである。自転車店でも、掛けてある軽量の極薄パイプのフレームを勝手に外して、手に持っているお客さまを見かけることがある。そういった方ほど扱いは雑である。要注意。



その3,知ったかぶりをしない。見栄をはらない。
 相手はプロである。雑誌だけで得た知識をふりまわしても、見抜かれて、その程度のレベルだという眼で見られるだけである。それより分からないことは分からないと言った方が親切に教えてもらえる。ちなみに、雑誌記事でも間違いがあったりする。鵜呑みにしないほうがいい。それより自転車が好きという気持ちを持っていれば、通じてしまう。前にも書いたが、これが趣味の世界のすごいところである。



その4、自分はお客さまだという過剰な意識をもたない。
 “お客さまは神様です”というのは日本での場合であって、海外では、お客さまと店主(店員)とは対等であるということを忘れないでほしい。横柄な態度だと、売るものも売ってくれない。実際、某国のショップに行った時のこと。店の奥からカンパのオールドパーツを持ってきてくれた。帰りに「日本人なんて来たことがないだろう?」と言うと、「ある。一人だけが」との返事。えっ!と思って、聞くと名刺を置いていったとの事。Wさん、自転車業界の人である。「何か買ったの?」「いや、売らなかった。態度が悪かった」そんな実話がある。


 この他にも、店が忙しそうな時には、それなりの配慮も必要である。これらの点に注意して店に入ってみれば、先ほどまで怖そうだった店主の顔が笑顔になります。さあ、ドアを開いてみましょう。

第10回へ続く...

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