カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第83回

清ちゃんのつぶやき(その68)自給率



 中国製ギョーザの問題が発生して久しい。この事件で日本の食料自給率の関心が高まるといった、いい傾向も出てきた。日本にいると分からないが、欧米に行くと延々と続く小麦畑とか、とうもろこし畑等の景色が見られる。ツールドフランスでも、マイヨージョンヌを象徴するかのような、真っ黄色のひまわり畑の中を通過する集団の光景も見受けられる。パリだのロンドンだの言っても、車で1時間も走れば郊外の田園風景に変わる。欧米の国々の食料自給率は100%を越えている。余ったものを海外に輸出している国もある。



 この問題があってから、日本の自転車の自給率はどうなのだろうか?等と考えてみた。今、100%メイドインジャパンの自転車はほとんどないと言ってもいい。完成車メーカーでもフレームの製造ラインは縮小傾向にある。悲しむべき事であるが、これが実状である。ホームセンター等の自転車は当然海外生産である。国内大手メーカーの自転車でさえ中国製である。少し高い自転車でもフレームや一部の部品は中国製、組立てのみ日本でやっているというのが大半である。



 一般の自転車がそんな状況なのはそこそこ感じてもらえていると思う。皆が好きなコルナゴやトレックでさえ、ほんの一部の高級車を除けば台湾や中国で製造されている。カーボン製といっても成型は台湾だったり、エンドやラグが中国製というのも当たり前の時代である。部品も同様である。イタリアブランドと思っていた部品の一部にアジア製が使われているという事も珍しいことではない。カンパニョロが日本支社を作った時には中国への販売の足がかりのためと考えたものである。と同時に、一部の部品を生産させるつもりではないかと疑ったものである。



 それにしてもいつからだろう?海外生産に移行したのは?一番早かったのはタイヤであろう。資源のない日本で作るより、天然ゴムの採れる東南アジアに生産拠点を持って行った方が人件費も含めて考えれば楽である。国内メーカーやクレメン、ビットリア、ピレリとイタリアメーカーも揃ってタイやシンガポール、インドネシアへと進出していった。服や電化製品はかなり以前から海外生産に移っていっていた。



 このようして採算のとれないものをどんどん海外生産に持ち込んでいった結果が現在の状況である。今更、国内で作ろうとしても生産設備もないというところだって多い。なにより、一社だけではどうしようもない。変速機一つ作るにもボルトの製造会社、樹脂の成形業者、スプリングやピンの製造会社等、数社が必要になる。更にアルミや特殊な鉄の材料を供給する業者も要る。それらを考えると数十社がなければ成り立っていかない。



 ただ、今、メイドインジャパンの動きが一部で出てきている。ただし、国内からではなく、アメリカからである。ハンドルの日東、ペダルの三ヶ島等、日本で頑張っていた部品メーカーの輸出量が増えている。ただ、安ければいいというだけでなく、ちゃんとした品質のものを求めるユーザーの声が出始めている。冷凍ギョーザではなく、手間はかかっても手作りでやろうとか、国内産材料で作ろうとかいった動きに似たような動きである。



 締まったのか、締まっていないのかよく分からない感触のボルトやら、外観はいいが、工具を当てるとガタのある精度の悪いアルミパーツ、鍛造時の皺が残る部品、折れた断面を見ると明らかに製造不良の部品、数えあげればきりがない。こんな事を感じている人たちも多いのではないかと思う。こんな状況を打破するには、我々、ユーザーが声を出すことである。一人、一人の声は小さいかもしれないが、まとまれば大きな動きになっていく。



 悪いものには悪いと言うことで改良されたり、なくなっていくだろう。一番いけないのは黙っていることだと思う。よくないと感じているのにそのまま使い続けていたりしても良くなりはしない。そんなもんだよと消費者をなめてかかっている経営者がいる一方で本当に世界に通用するものをと努力している経営者だっている。我々の小さな声をそんな人たちに届ける事で良い製品が生まれてくるものと信じている。

第84回へ続く...

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