カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第81回

清ちゃんのつぶやき(その66)雑誌



 今月も自転車の雑誌が手元に届いた。毎月定期的に送られてくるものである。ぱらぱらとめくっていて、ふと、先日のお客さんを思い出した。年齢は40歳くらい、少しメタボ気味なので自転車に乗って運動をしたいといったものだった。そんな初心者が書店に行って初めて手に取る雑誌、それが意外とないというものだった。



 たしかにぱらぱらとめくってみても、いきなり30万円だ、40万円だといった自転車のインプレッションが載っていたりする。初めてスポーツ車に乗ってみたいという人には少し高すぎる金額である。別冊の「2008年ロードバイク」等の雑誌も見てみるが、初心者用の10万円以下のものの扱いが少ない。そこで実際、店に出向いてみると、結構そんな自転車もあるのだなと分かる。



 確かに雑誌は難しい。一つの雑誌で初心者からベテランまで満足できるようなものを載せる事は不可能である。かといって特定の読者に絞ってしまうと発行部数は限られてしまう。出版社にとっても頭の痛いところだと思う。それでも初心者の数を増やさなければ底辺は広がっていかない。初心者も数年経てば初心者でなくなってくる。



 海外では雑誌がジャンル別になっていることが多い。ロードならロードを主に、MTBならMTBというように、BMX専門誌やらツーリング専門誌もある。そのなかで初心者コーナーやらベテランコーナーといった記事が載っていたり、別冊でロードレース入門といったものも見かける。もちろんその中で各地のクラブチーム等の紹介も載っていたりする。



 数年前から日本でも月刊誌の数が増えている。ある意味、非常に喜ばしい。それだけ自転車に興味を持っている人が増えているのかもしれない。ただ、ここで肝心なのは、それぞれの雑誌が特徴を持つことである。同じ様な内容、同じ様な記事では読者にとってはどの雑誌を買ってもいいわけで、この雑誌を買わなければならない、買いたいという特色を出していかなければ存続は難しい。



 昔は雑誌も少なかった。その分、情報を得るにはどうしていたかというと人である。友人同士、店を核にした人とのコミュニケーションがなされていた。自転車をやりたいと思うと、友人・知人に話をする。そうすると、それならあいつに聞けとか、あそこの店に行ってみたらとかのアドバイスがあった。もちろん自分がステップアップしていけば付き合う友人や店も変わってくる。そうやって幅を広げていった。



 今、そのような人間関係も希薄になってきている。自転車を始めたいと思っても、人に相談するのではなく、雑誌や画面に向かう事も多い。その分、雑誌にも責任がある。その人が長く自転車生活を続けられるのか、興味を持てず、すぐに頓挫してしまうのかを決める要素にもなりかねない。これは自転車を販売している店にも言える。



 クラブチームにも所属せず、一人で自分流に走っている人もよく見かける。雑誌だけ見て走っているせいか、フォームが悪い。強い選手のフォームのつもりだろうが、体力がついていないせいで妙なところに力が入り、逆にぎこちなくさえ見える。そんな意味では雑誌の責任は重要である。「これで楽に走れる」といった記事にも初心者を対象にした配慮が必要になってくる。



 そうそう、欧州の雑誌で面白いのは付録。ステッカー等はあたりまえで、中にはボトルだのキャップが付いている時もある。本屋で雑誌にボトルが付いて山積みされている光景、結構、笑えるものがある。それを雑誌の内容も見ないで買ってしまう自分もバカだなぁと思う時がある。

第82回へ続く...

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