カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第38回

清ちゃんのつぶやき(その29)お守り



 レースやツーリングに行く時、お守りを持っていく人がいる。ツーリングだと立ち寄り先で入手し、バッグにぶら下げている姿をよく見かける。多くは神社や寺院のものである。人によっては彼女の写真だったり、強い先輩からもらったボトルや部品だったりもする。



 レースでもジャージのポケットに入れている人、ヘルメットの後ろに貼っている人、自転車に貼っている人もいる。お守りを持っていても事故には遭うし、勝てない事だってある。誰も本心から、持っているから絶対に大丈夫などとは思っていないだろうと思う。ただ、持っている事での安心感は得られる。



 実業団チームをかかえていた頃、チーム内でけが人が続出したことがあった。まさかと思える選手まで落車して、次の試合までに完治するのだろうか、団体追い抜きはどうしようか等と考えこんだ事がある。幸い、皆、大したけがではないので、大きな事故が起きないようにと、選手の名を書いた札を持参して筑波神社に行き、祈祷してもらい、お守りをもらってきた事もある。効を奏したのか、その後、東日本大会を迎えることができた。



 かって、現役のレーサーの頃、私にもお守りがあった。と言っても、神社等のお守りではない。それはリアの23Tである。アップダウンの激しいコースだと、どうしても使いたくなる。ただ、それを使うと先頭集団から離れていってしまう事は分かっている。使うのは21Tまでである。苦しい上りで後ろの歯をちらっと見る。あと一枚、残っている。それだけで安心する事ができていた。



 伊豆のCSCでは練習時に23Tを使っていた。ところが、試合時には使うことはない。試合では集団走行をする。その場合、空気抵抗が少ないから23Tを使うことはないのである。よく、他の連中から「使わないのだったら、その分クロスにすればいいのに・・・」等と言われたりしていたが、どうしてもできなかった。その他の平地のレースでもローギヤだけは使わないようにしていた。



 これは今に至っても続いている。大観峰や小国の長い坂を登っている時、脇の下から覗く、あと一枚残っているだけで妙に安心できる。レースをやっているわけではないから別に使っても関係ないのだが、なぜかなかなか使えない。それにしても、もっと大きな歯が欲しい。フロントをトリプルにしようか、コンパクトドライブにしようか等と真剣に思っている現在の自分が情けない。体力が落ちているのを実感するこの頃である。

第39回へ続く...

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