カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第333回

清ちゃんのつぶやき(その276)螺子(ネジ)その1



 弥生、三月、緑川の土手にも土筆が顔を出してきた。いよいよ待望の春である。ところで、今回はねじの話、工業系の学校を出た人には当たり前の話なのでパスしてもらっても構わない。そうでない人達には覚えておいてほしい事である。



 身の回りにネジはたくさんある。工業製品であれば必ずと言っていいほど使ってある。工具などを触った事のない家庭でもプラスとマイナスのドライバーくらいはある。それ程身近なネジだが、意外と基礎が分かっていなくて間違った使い方をされている場合も少なくない。自分で自転車をいじったが、その後調子が悪いといって持ち込まれる自転車もある。見ると組み付け順序が違っていたり、ワッシャーが抜かれていたり、締め付けが不十分だったりする。



 今さら書く事でもないが、ネジは古くは鉄砲の弾を真っ直ぐに遠くまで飛ばすための技術だった。銃身内部に螺旋状の溝を彫り、弾を回転させる事により、真っ直ぐに飛ばすための方法だった。それがモノを固定させるための技術に変化していく。



 先ず、モノを固定する場合、ボルトとナットで締める。この場合、どこで固定するのかと云うとネジ山そのものではない。ボルトとナットの当たる面(赤で印されている部分)で固定するのである。この点を知っていれば、いろんな間違いは解消される。ボルトとナットだけでも固定できる。ただ、固定力を更に増すためには当たる面を広くすれば、より効果がある。そこでワッシャーが必要になってくる。



 ここでワッシャーの重要性がでてくる。ワッシャーでも平ワッシャーとかスプリングワッシャーがあるが、平ワッシャーの場合は接触面積を増やし固定力を増すためのもの、スプリングワッシャーの場合はネジが緩むのを防ぐためのものであり、両方を使っているケースもある。平ワッシャーで片面にセレーション(ギザギザ)が付いているものがあるが、上記の点を理解していれば自ずとどちらが表面かが分かると思う。



 ちなみに、ネジと云うものは衝撃や振動で緩むと云う性質を持っている。“ネジは緩むもの、ワイヤーは伸びるもの”と云う意識があれば普段の点検の重要さが判ると思う。それにもう一つ、特殊で重要なのが、“自転車にはインチネジとミリネジが併用されている”と云う点である。中には微妙に合うものもあり、最初の一山が入るものの、その後、入らなくなる。そのまま強引に締めていったらネジをダメにしたと云う話もある。自分で部品交換をする人はその点に留意してほしい。ハブ軸などはインチのものとミリのものがあり、玉押しやナットも違うので要注意である。



 更にインチネジではUNF(ユニファイ)とかW(ウイット)ネジもある。これはネジ山の角度が違う。昔の海外の自転車をレストアするとかいった場合には気をつける必要がある。同じペダルネジだが、一般はインチ、古いラレ―とかはWネジ、フランスはミリネジ、アメリカではUNFネジと4種もある。



 ネジの事を書き始めると、何回も連載しなくてはならない程たくさんある。とにかく自転車をいじる際、途中でおかしいと思ったら止める事である。また、油分をさす事にも留意してほしい。ネジを締め込んでいくと互いのネジ山同士が擦れて熱を帯びる。ネジ山が熱膨張するのである。無理に締め込まないで、それの冷却と潤滑のためにオイルやグリスをさすのである。自分でいじる事も楽しいし、必要なことであるが、こういった基礎知識を持ち合わせてやっていれば失敗も少なくなると思う。



第334回へ続く...

螺子(ネジ)その2

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