カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第322回

清ちゃんのつぶやき(その265)キャンピング車 その2



 分解作業をしていると、他にも見えてくるものがある。BBワンを外した時、何か紙片が出てきた。印刷物で雑誌の一部だと思われる。文字が書いてあるが、どうもスペイン語みたいだ。たまたま、その日、メキシコ系アメリカ人の英語教師の人が来たので見せてみるとそうだとの事、なぜこのようなものがシートチューブ(それもBB付近)に入っていたのだろう?ウォーターシースが入っているので、シャフトが水に濡れることはない。考えられる事は、どこかでBBを分解した際、グリス等を拭きとった残りかもしれない。海外ではよく拭いたりする場合、布ではなく、紙を使ったりする。内容は自動車の売りたし等の記事などであった。






 この他にもクランクはスギノだが、板はTAになっていたりしている。リヤディレーラーはサンツアーのXCに替えられている。その他にもダブルレバーの取付ネジが左右で違う事など細かくみていくといくつもある。旅の途中でいろんな自転車トラブルがあった事が判る。チェンホィールもだが、前回書いた前後ハブの違い等、フランス語圏で大きな修理をしていると思っていたが、後日、お客さんより電話があり、どこかでそのような事をしなかったか聞いてみた。フランスで行なったとの事で推測は当たっていた。車輪組みを含め、本当にいい仕事をしている。






 リヤエンドのダボ付近も傷ついている。キャリアのトラブルが何度かあった事を物語っている。キャンピング車の欠点はここにある。フロントはほとんど問題ない。バッグの重量をエンドとフロントフォークでほぼ垂直に受ける。ところがリヤは自転車の中心からバッグが離れている。キャリア取付はエンドとシートステーの両端である。確かにバッグの重心は下がっているものの、上下左右の揺れに対しては弱い。捻じれも生じる。バッグの重量はエンドのみで受ける事になる。そのため、エンドネジやキャリア取り付け部が折れたりする。キャンピング車に乗っていた人には理解できるのではないかと思う。私もキャリアが折れ、エンドに当たる部分を近くの鉄工所で補強溶接してもらった記憶がある。






 この問題を解決しているのが、先に世界一周を目指す青年に渡したグレートジャーニーである。いわゆるパニアバッグ形式だが(実際はセパレートバッグ)重心は高くなるものの車体中心に近く揺れ(捻じれ)に対しては有利に働く。これまで何台も売ってきたが、昔のキャンピング車のようにキャリアに対するトラブルは一つもなかった。よく計算された自転車だと思う。






 今、件のキャンピング車は分解したまま、年内に車輪が組めるくらいになると思う。合間をみての作業なので、なかなか進んでいかないが、来月には引き渡しができるようにしたいと思っている。人生の一部を共にした自転車、青春の大部分を共にした自転車、受け渡しの時、ご本人はどういった気持ちを持たれるのだろうか?本人だけにしか分からない想いがあるに違いないと思う。遠く異国の地で地平線に沈む夕陽に涙した事、困窮した場面で手を差し伸べてもらった人の温かさ、いろんな想いが甦ってくるのかもしれない。



第323回へ続く...

第330回 キャンピング車 その3

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