カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第247回

清ちゃんのつぶやき(その196)奇跡



 6月4日に九州先行上映された「奇跡」という映画がある(今も上映している)。離婚した父母とそれぞれに福岡と鹿児島に住む兄弟が新幹線の一番列車が擦れ違う時に願い事をすれば叶うという噂を聞いて子供達だけで旅をするといったストーリーである。彼らが北と南から合流する駅が私の住む川尻という事で、梅雨の休日に映画を見に行った。子供たちがトンネルの所で交差する新幹線に向かって、力一杯、願い事を叫ぶクライマックスシーンがあった。



 ハリウッド映画やCGいっぱいの映画と違って派手さは全くない。まえだまえだの兄弟にオダギリジョーや阿部寛、長澤まさみに橋爪功、樹木希林とベテラン俳優達が周りを固めている。ストーリーの結末から言えば、最終的には奇跡はその場では起きない。ある意味、子供を取りまく大人たちの静かな物語りかもしれない。家に帰ってから余韻を楽しんでいてふと気が付いた。あのトンネルはどこだ?川尻駅が出てきて、次に宇土シティが出てくる。という事はその先?調べてみたが、松橋だろうというくらいでよく分からない。



 次の休みの日、自転車でロケ地を調べに出かけた。うまくすれば新幹線が目の前で擦れ違うかもしれない。その時はお願い事をしようなどと思って家を出た。国道3号線を走り富合町の新幹線の待機場を見てみる。あいにく全車出払っており、一台もいない。と思った直後、滑るように一台帰ってきた。九州新幹線、出来るまではいろいろと議論があった。開業前日には東日本大震災という不運な出来事で祝ってくれる人がいない(大規模な祝典セレモニー等が中止になった)というスタートを切った。開業後、何人かの人達と話したが、一応に新幹線が開業してよかったという意見の人ばかりだった。






 梅雨の晴れ間、途中、暑いので宇土の轟水源に立ち寄る。もう夏である。空には入道雲、ボトルは自転車に付けていたが水は入れて来なかった。ここで満タンにする。すぐにボトル表面に水滴がつく。冷たい水を飲み、木陰で涼んでから出発。家からも近いので休憩する必要もないのだが、遠くに来た気分になる。涼をとってから、松橋まで行くことにする。轟水源から新幹線を左に見ながらウキ(宇城)ウキロードを走りながら気が付いた。不知火(しらぬい)に抜ける所に山がある!頂上付近から道があればそこからトンネルが見えるかもしれない。






 クルマのためのきつい傾斜の坂を登ると左に脇道がある。細い道を行くと確かにトンネルはあるが違う。これは反対側だと思い、一旦、元の道に戻ってから更に進む。下りかけの所に脇道、舗装はされているが細い。こんな所でロケ車が何台も入るのだろうか等と思っていると見覚えのあるフェンス。ここだと思い、自転車を止めて子供達が入ったようにフェンスの裏側に入っていくとあった!草が生い茂っているが、間違いなくあの場面の所である。クルマが擦れ違えない細い道で、こんな所で撮影していたのかと一人感動していた。偶然にも新幹線は来たけれど一台だけで目の前で擦れ違うことはなかった。帰りには象さんの形をした入道雲を見た(カガワのキャラクターは象さんである)。



 そう言えば九州新幹線、開業前に沿線で撮影したCM、開業後はTVから流されなかったが、JRのホームページで見ることができた。震災後の暗いムードの中、一人で見ながら感動していた。東北の被災者の方々も見ていたようで“元気が出るCMだ、なぜ放映しないのか?”等と逆にコメントされていたようだ。このCM、実はDVDになって出た。早速、購入してみると特別バージョンも入っていて、楽しい。沿線の人達が手を振ったり、パフォーマンスを見せてくれたりするだけのものなのだが、なぜか最後のナレーションには涙が出てくる。「あの日、手を振ってくれてありがとう。笑ってくれてありがとう。一つになってくれてありがとう。九州新幹線全線開通です・・・」うん、やっぱりこれは実際にみてみないと分からないだろうな。



第248回へ続く...

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