カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第225回

清ちゃんのつぶやき(その178)本 その3



 アレックス・サンジェの写真集が出ると云う噂を聞いたのが昨年秋、その本がついに発売された。早速購入してしまった。タイトルは”パリの手作り自転車”アレックス・サンジェというものである。価格は5900円とやや高めであるものの、写真も大きく、内容も濃い、それ相応の価格かもしれない。内容はサンジェの歴史、45台もの自転車、オリジナルのパーツ類、昔のカタログや解説といったものである。へぇ〜と思うような事も書いてある。



 アレックス・サンジェといっても知らない人も多いと思う。現在も続くフランスのフレームビルダーである。ルネルスも有名だが、その他のビルダー達も本人が亡くなったり、後継者がいなくて次々と廃業している状態にある。フランスはもとより、イタリアやその他のヨーロッパの国々でもフレームビルダーは減少傾向にある。日本は競輪という特殊な世界があるために他の国々に比べれば残っている方である。



 昔、フランスに行くと、”SUR MESURE”と云う看板がよく目に付いた。要するにオーダーメイドのことである。パリの凱旋門を挟んでシャンデリゼ通りの反対側、グランアルメ通りにも自転車屋に混じってこの看板がある店が1軒、その裏通りにも1軒あった。そういえば、この通りで朝からウィンドウショッピングをしていた時に自転車に乗った人に話しかけられた 事を思い出す。その時に乗っていた自転車がアレックス・サンジェだった。



 私が興味を持って見ていると感じたのか、高いぞぉと云うジェスチャーをする。日本では人差し指と親指で輪っかを作ってその表示をするが、欧州などでは人差し指と親指を擦るような仕草をする。日本では硬貨、欧州では札を数える仕草である。知っていると言うと私が持っていた地図に印をつけ、電話番号まで書いてくれた。今から行くのなら電話しておいてやるとまで言ってくれたが、そこまでの時間がなかった。



 昔からよく尋ねられた事だが、今回も会社の者から聞かれた。「アレックス。サンジェって持っていないんですか?」ルネルスもサンジェも持っていない。理由はいくつかある。ある時期からロードレーサーに傾向していったからである。勤め始めてからしばらくしてから、ルネルスやサンジェを得る機会は数度あった。実際、フランスにも何回か行った。メルシェやルジュンのフランス車も入手したが、ロードレーサーだった。その後、以前勤めていた会社で実業団チームを創設したこともあり、レーサーの方にウエイトをおくような事になった。休みの日にもレース主体でツーリングをしなくなった。



 せっかく作ったトーエイのツーリズムも数回乗っただけで押し入れの中で眠っている。シルクスペシャルキャンピング車も以前勤めていた会社の人の子供に売ってしまった。ロードレーサーにしても突き詰めていくとどうしてもイタリアものになっていく。ルジュンのロードも知人に売り(メルシェはカンパ部品だったので今も残っている)、その後、イタリアブランドロードがメインになっていった。200回で紹介したコルナゴもそうであるが、現在使っているのもイタリアンブランドものである。そんな意味で泥除け付きの自転車、それもツーリング車への興味も徐々に薄れてきた。



 他の理由としては当時のフランス規格にあった。イタリアンとJISは同じ規格のものがあったが、フランス規格はフレームパイプの太さからステム、ハンドル、シートピラー、BBやペダルに至るまで違っていた。ちょっと部品を替えようにも部品捜しが大変だった。それは友人の昔のプジョーや持っていたルジュンで体験していた。場合によっては欧州出張の際に購入していた。フランス車、サンジェに関してはまた別の機会にでも書いてみたい。今になってあれこれ考えるとルネルスなどは入手できた当時に購入しておけばよかったなぁ等と思う時もある。



第226回へ続く...

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