カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第214回

清ちゃんのつぶやき(その168)オーバークオリティ その2



 2011年モデルの自転車が入荷してきている。ロードレーセーではアルミやカーボンフレームのBB30規格が増えてきている傾向にある。これまでフレームのメインパイプから始まり、フォークやヘッドチューブと大径化してきていたが、ついにBBに至ってフレーム域は完成に近づいてきた。残るはハブ軸の大径化とエンド幅の広さの問題で、これでさえ現実のものになろうかとしてきている。一昔前に比べると本当にもっこりしたものになってきてしまった。流行りのクロモリロードと並べると笑ってしまう程である。



 はからずも、ある人が新モデルを見て「こんなに丈夫な自転車って必要とされているのですかね?」とつぶやくように話されていた。踏んでもたわまない、力のロスが少ないもの、それはそれで必要なのだが、レースを目指すのでなければ余計なものに思えてしまう。ドイツ人やオランダ人のように身長190cm、体重80kgといった体格の人達が当たり前のような人種が乗るのであれば丈夫な自転車も必要になってくる。ハンドルやブレーキレバーにしても今のように太いものが必要になってくる。ただ、身長も低い、体重も重たくない初心者程度の人には不必要なものである。立ちこぎしてもたわまない強くて軽いフレームのどこがいけないの?丈夫だからいいじゃないか?と思われる人もいると思う。



 この事はこれまでにも何度か書いた。本当は乗る人、一人、一人に合わせたものを供給できればいいのだろうが、マスプロメーカーではほとんど不可能である。ここでメーカーの開発している方々に要望するのが、初心者用とうたっているモデルであれば、それなりの材質、強度、寸法等を見直してもらいたいのである。単にパーツのグレートアッセンブルを変えただけでの価格設定をする、少しばかりホィールベースを長くするような初心者用を揃えるといったラインナップでなく、本当に求められているものは何かを突き詰めてほしい。



 確かに初心者が、雑誌やTVで見た有名選手が乗っているようなトップグレードのようなものが欲しいと思うのは世の常である。ただ、それを入手することはなく、下位モデルを購入することが多い。そのマーケットに投入するモデルはある意味、大切である。最初の一台、そこで走り方やテクニックを身につける、走る楽しみを見出せるものになっているのか、次にグレードアップしたくなるのか、そこで自転車人生を終わらせるのかはそのモデルがカギを握っている。そこであまり体に負担をかけないような自転車作りが要求される。



 メーカーによってはしなやかさを売りにしたモデルもある。素材やパイプ径を考慮したものである。クロモリのやさしさをウリにしたものがある。ただ、クロモリに匹敵するカーボンフレームを作ろうとすると高額なものになるという話も聞く。金属であるアルミでも同様である。断わっておくが、クロモリがベストと言っているのではない。クロモリにも欠点があった。それを補っていろいろこれまで様々な試みがなされてきた。実際、今のクロモリパイプは昔のそれとは違った性質を持つ。



 大切なのは上級者には上級者用の、初心者にはそれ用の素材選び、パイプ径や形状を含めたうえでのスケルトン設定や部品選びをすることである。どうも近年、各メーカーのラインナップを見ていて、安易なモノ作りが見える事が増えてきたように感じる。ただただ、硬く、丈夫になっていくだけの現状に何か危惧を感じる時もある。上級モデルと同じようなものを安価で提供してくれという要求もあるだろうが、我々の考えるものはこうなのだといったメーカーとしてのポリシーも欲しい。



第215回へ続く...

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