カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第215回

清ちゃんのつぶやき(その169)道後温泉



 また、海を越えて四国に行ってしまった。今回の目的地は愛媛県松山市の道後温泉である。先月、足摺岬に行った帰り、なぜか、次は道後に行こうと決めていた。道後はご存じの通り、日本最古の温泉である。10年程前にもクルマで一度行った。泉質はアルカリ性単純泉、少しばかりの硫黄臭がする。最初に浸かった印象は熊本の植木温泉と同質というものだった。九州にも同様な泉質は多い。温泉の種類が多い、あの有名な別府にも同質なものがある。湯布院にもあるし、熊本県でも山鹿や菊池にある。地図で見ると一つのラインみたいなものが見えてくる。



 今回は前回のような3時間しか眠らないといった無謀なことは避けて、極めて健全な(?)行程で行った。それでも朝5時出発である。家を出て、大分県の臼杵市まで向かう。9時前のフェリーに乗り込むためである。愛媛県八幡浜港に着いたのが11時頃、それから大洲までは夜昼トンネルという変な名前の峠を越えるが大したことはなかった。内子の手前辺りから徐々に勾配がついていく。ここで計算外だったのが風だった。この日は最後の松山まで向かい風といった散々な目にあった。上りで向かい風、時速10キロを下回った事も数回ある。おかげで写真を撮っていない。上り途中で足を止めると走り続ける事ができないような気になったからである。



 それでも川に沿って上る左右の景色は綺麗だった。黄色や赤に紅葉している山の木々を見ながら走っていると上りのきつさも忘れてしまう。こちらの方向は八十八か所の寺がなく、足摺岬に行った時と違って、お遍路さんの姿も見かけない。しかし、激坂はないものの、20キロ以上にわたるこの坂道、中山という所を過ぎてから何度も騙された。稜線が見えかけ、もうすぐで終わると見せかけて、コーナーを曲がるとその先にまた上りがある。やっとの思いで頂上の犬寄峠に着いた時にはほっとした。



 その先は伊予市まで下り、下っていて、こちらからだったら上れなかったかもしれないと思った。皆さんにもあると思うが、下りでよくそんな事を考えるものの、そのような事はない。結局、どちらから上っても一緒だったりする。伊予から松山までは広い道路、風を遮るものはない。とにかくも松山を目指し平坦な道を向かい風の中、黙々と進む。



 実は今回の旅、目的がもう一つあった。松山でフレームビルダーとして、自転車店を営んでいる梅沢氏を訪ねる事である。事前に連絡はしていなかった。氏には借りがある。もう30年以上前になるだろうか、JCAの伊豆での研修会の実走でチューブラータイヤを借りたことがある。スペアタイヤを2本持っていっていたが、2本ともパンク、そこに居合わせた初対面の梅沢氏がタイヤを貸してくれた。その数年後、十数年後と仕事の関係で展示会やらレース会場等でも何度かお会いしたことはある。その度に「もう時効だよ」と笑って言ってもらったが、自分自身の心の中では終わってはいなかった。何時か、いつの日にか何かしなければと思っていた。



 そんな訳で、市内に入ると道後温泉の手前にあるショップへと立ち寄った。生憎、氏はご不在だった。従業員の方に少し話をうかがう。フレームビルダーとしては競輪の方で忙しく、最近はアマチュアの方はあまりやっていないし、下手をすると1年以上、2年くらいかかる等と話されていた。氏の近況を聞けてよかった。みやげにと玉名ラーメンのセットを置いていく。道後温泉まではものの数分、これから今夜の寝床を捜す。初冬の夕暮れは早い。宿はすぐに見つかった。捜す秘訣は後日書いてみたい。朝食付きで6500円、夕食は近くでじゃこ天が入ったうどん定食で済ます。その後、土産物店を散策、温泉で1時間以上入浴し宿に戻って寝た。





 朝から朝食を済ませて、またもや温泉、おかげで出発は遅かった。朝のラッシュは避けたつもりでいる。その後、伊予から今度は海岸沿いに走る。昨日と違って今日は追い風、順調に距離を稼ぐ。右手に海、何か宇土半島を三角(みすみ)に向かって走っている感覚に陥る。しかし、歩道を広くとってあるのではるかに走りやすい。途中、いくつかの町で旧道と思しき道があるのでそこを走る余裕さえ出てくる。平坦な道が終わると八幡浜までの峠があるが、向かい風がない分、楽である。市内に入る手前の最後の峠(坂?)では自転車・歩行者専用の珍しい長いトンネルがあった。



 市内に入るとフェリー出発まで余裕があるので市内探索。旧家やらたくさんあり、昔、栄えていた事をうかがわせる。少し遅い昼食で八幡浜ちゃんぽんの店に行く。焼飯セットがあったので注文すると、両方共にフルサイズ!何とか時間をかけて平らげるものの、しばらくは何も食べなくていいような気分になる。しばらくするとフェリーの時間、フェリーって本当に旅している気分に浸れる。平日なので客室も人が少なく、余裕で眠れる。臼杵に着いたのは夕方のラッシュ時、のんびり帰り着きたかったが熊本まで飛ばして帰ってきた。いつか、日本一周、温泉巡りの自転車旅行をやりたい、ランドナーに再度乗り始めてからそんな事を考えるようになった。



第216回へ続く...

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