カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第181回

清ちゃんのつぶやき(その140)企業・店



 ウチの近くに饅頭屋がある。なかなか美味しく、店は繁盛している。開店時間は決まっているものの、閉店時間は決まっていない。早い時には昼頃には店を閉めたりする。朝に作って売りきってしまったら、そこで終わりである。近くにはスーパーもある。こちらは24時間、四六時中、商品の補給をしていて陳列棚には空きがないようにしている。同じ商売だが、全く方向性が違う。



 欧米の企業によく見られるが、販路を大幅に拡張しない、自分達の出来得る範囲での商売をするといった考えのところである。企業は右肩上がりで成長しなければならないといった考えはない。急激に広げ過ぎて行き詰まり消えていく企業がある半面、このような生き方をする企業もある。もちろん、拡張しながら成長していく企業だってある。これは自転車業界にも言える。レーサー関係だと日本に入ってこない、日本では知られていないメーカーも欧米にはある。イタリアならイタリア、フランスならフランス国内だけをターゲットにして生きているメーカーもあれば、コルナゴみたいに一介のフレームビルダーから販路を広げていったメーカーもある。



 パーツメーカーではカンパとシマノも生き方が違う。ロードパーツ一本でやっているカンパ、片や高級品から普及品まで、ロードレーサーからママチャリのパーツまで広げていったシマノ、それぞれの生き方がある。よく店で、ビアンキももっと作れば売れるだろうに等と言われる事がある。納期が特殊なためにバックオーダーをかかえているものもいくつかある。日本や台湾・中国のメーカーだと、売れそうだ、やれ設備投資だ、販路開拓だと走ってしまう事が多い。そのあたりが欧州文化との違いである。



 今でこそサイクルヨーロッパという企業の傘下にあるビアンキだが、その精神はそのまま引き継がれていっている。もちろん当初はイタリア国内をターゲットにして生産販売していた。それが時代と共に欧州各国に出回りアメリカまで輸出するようになった。その後、日本を始め各国に輸出するようにもなった。一時は販路を広げ過ぎて経営が危うくなった事もある。実際、最後には危うくなってサイクルヨーロッパに吸収されてしまった。こんな風にして、吸収されてなくなってしまったブランドも多い。



 こんな事を書いたのは、少し前、某ラーメン屋さんの話を聞いたからである。熊本ラーメンで有名な店で、よく店の前に行列ができる。県外のお客さんも多い。ここが10年程前、マスコミから勧められてちょっとばかり宣伝広告をやったがためにお客さんが増え過ぎて、今になって後悔しているといった話をしていた。地元のお客さんだけをターゲットにして家族でやっていたのが忙しくなりすぎ負担になってきているという話である。もちろん支店を作るとか店を拡張するとかの意思は全くない。商品をお客さんに渡し、喜んでもらう。同じコンセプトだが企業や店によって、その方法は様々であるという話である。

第182回へ続く...

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