カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第17回

清ちゃんのつぶやき(その12)サドル



 いつもながら感心するのが、イタリアのサドル業界である。ご存知のように、サドルは先日のアラヤのランドナーにもついていたブルックスのように、皮サドルが長い間使われていた。自転車がその歴史を刻み始めた100年くらい前から近年に至るまで皮製であった。これが変わりはじめるのが素材面である。合成皮革の下にスポンジを入れたものである。日本では藤田、加島、高橋、太平等のサドルメーカーがあった。ただ、70年頃でもレース用はブルプロに代表されるように皮であった。



 これを変えたのが、チネリである。最初はプラスチックベースのみのものだったが、すぐに合成皮革を被せたものが出た。バックスキンもあった。本格的なスポーツ車に使える皮サドル以外のものの登場である。チネリに続き、次々とサドルメーカーが顔をだしてきた。



 セライタリヤ、サンマルコ、セラロイヤル等である。フランスもイデアルがあった。それぞれ、個性的なサドルを出していた。途中、コンコール等のこれは!と思うサドルも出てきたが、サンマルコのロールスに代表されるように、割と息の長いモデルを作り続けてきた。



 これに一石を投じたのが、フライトではなかろうか?ここからレースモデルは薄型のサドルに変わっていく。その後は今に至るところである。ワイヤーベースもチタンやカーボンとあらゆる素材が使われていった。これで走れるの?と思えるカーボン一体といった究極のサドルまで出てきた。今、サドルを選ぶのには苦労しない。入門用のふわふわ型から、本当にこれで走れるの?というくらいに種類は多い。スポーツ車に関してはイタリアのサドルメーカーの弛まない努力とセンスがあったから、ここまでこられたのだと思う。逆に言えば、日本のサドルメーカーはそれを出来なかったから消えていったのではないだろうか。



 ちなみに日本では意外と見過ごされているが、ベル業界がある。ただ単に音を鳴らすだけのものだが、指で弾いて音を出すだけではなく、ベル本体をまわすもの、グリップ式のもの、一般車、子供車を見ると面白いものが結構ある。



 価格ばかりを追いかけていては何の進歩もない。画期的な新製品を生み続けてこそ生き残っていけるという典型的な例である。イタリアサドルの新製品が出るたびに新鮮な印象を受けている。形、色、チタンやカーボンといった新素材への取り組み、単純な部品だけに難しかったと思う。シマノみたいにコンポーネントで開発するものとは根本的に違う。



 ペダルはルックの登場で画期的な進歩を得た。変速システムは何とかならないものだろうか?電動変速システムがマビックで発売されて10年以上経つ。もう、そろそろ何か出てきてよさそうなものである。また、チェンを架け替えて変速させる原始的なシステムも何とか打破したいところである。理想を言えば、無段階変速、軽量・低価格のものというのが理想である。理想に現状から脱却した発想で立ち向かうことによってのみ、メーカーが生き残れる道がある。

第18回へ続く...

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