カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第124回

清ちゃんのつぶやき(その97)春需前



 三寒四温というが、急に温かくなったと思った次の日には寒さが戻る。だんだん春に近付いてきているのだろう。春と言えば、我々にとっては忙しいシーズンである。すでに郡部の店では動きが始まっている。市内でも月末になれば動いてくる。また、皆さんにご迷惑をおかけする季節になってくる。



 先日、春前、最後の連休ということで霧島の温泉に行ってきた。湯治宿である。年に一度は宿泊している。山間部にあり、これまでは携帯の電波も届かなかった地域だった。今年、行ってみると通話できるようになっていた。時代の流れだろうか便利にはなったが、一抹の寂しさも覚えた。次の日、帰りに自転車屋さんに寄った。これまで何度か行っているが、店の休みと私の休みが重なっていることが多く、なかなか入って見ることができなかった。



 今回は開いていた。なかなか楽しい店だった。整然と並んでいるようで、そうでない、50万のロードレーサーの近くには一般車が置いてあるといった店である。きちんと組立られた自転車を見ていると、自分でも微笑みが出ているのが分かる。ゆっくりと店内を回って目の保養をさせてもらった。自分のメンテ用の用品を買って帰った。



 家にたどり着いて、工具箱に入れた。今はあまり使わない工具が数点あったので、それを昔使っていた工具箱に移し替えた。その時、懐かしいものが出てきた。写真を見てお分かりになるだろうか?糸と針、糸切りである。自転車に何でこんなものが?と思われる方もおられるかと思う。ウエアの綻びを直すものではない。これはチューブラータイヤのパンク修理に使うものである。



 今は自分でも使い捨てみたいにして使っているが、学生の頃はタイヤ代もばかにならなかった。時間はあるが金はない。とにかく走っていた頃である。当然パンクもする。まだトレッドが残っているのに捨てるなんてできなかった。夜にはパンク修理である。裏のテープを剥がして、縫ってある糸を切る。5センチくらい開けた所からチューブを引き出し、パンク修理をするわけである。終わったらまた縫って、リムセメントでテープを貼り付ける。縫う時には細心の注意が必要である。針でチューブを刺してしまったら元も子もない。また、縫うときにも同じ力で糸を張らないと空気を入れた時に曲がってしまう。



 よくもこんなものが残っていたものだと感心すると共に、懐かしさも感じた。もう何十年使っていないのだろうか?今の時代、売ってもいないだろうし、使っている人もいないのではないだろうか?自分でもすっかり忘れていたくらいである。ただ、昔はこんなものがあった、そんな過去の歴史の一部をかいま見ることはできる。

第125回へ続く...

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