カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第109回

清ちゃんのコレクション(その24)ゼウス&ジャン・ロベルト



 今回もディレーラーの話である。次回は別のものを予定しているので我慢してほしい。どうしても、自転車のメカニズムというとディレーラーが面白い。それもリヤである。どこのメーカーもリヤディレーラーを中心にしたコンポーネントを組むわけも分かる。今、カンパのコレクターとして、雑誌や特集記事で有名な OD BOX の殿村さんも「ありとあらゆるものをコレクションしているときりがない。場所の問題もあるのでリヤディレーラーだけに絞ってコレクションをする」と以前、話していた事を思い出す。





 さて、今回のゼウス・クリテリウムだが、カンパの鉄レコのコピーである。ただ、プーリーケージはアルミ、上下のボルトも少し凹みがあって、オリジナルより軽量化されている。パンタグラフ式のディレーラーを最初に世に出したのはカンパである。ただ、最初に考えたのはゼウスという話もある。なぜ先に製品化しなかったのかというと、スペイン内戦で自転車の生産どころではなかったからという事である。





 確かにイタリアやフランスと並び、ツール優勝したP・デルガドやM・インデュラインといった優秀な選手を輩出した国である。BHといった古くからのメーカーや小規模の優秀なフレームメーカーもある。このような土壌で部品メーカーが育たない訳がない。有名な部品メーカーがあってもおかしくない環境にある。ただ、実際はこの国からは出なかった。





 それにしても、よく、ここまでフルコピーしたものだと感心する。クリテリウム以下のクラスだとフルコピーしていないものもある。ゼウスは日本には70年頃にNC誌に紹介され、輸入された。カンパよりは安かったが、それでも高価だった記憶がある。スペインには他にトリプレックスというメーカーもあった。今回、ディレーラーが見つからなかった(確実にどこかにあるはず)が、ダブルレバーだけは出てきた。トリプレックスは一時期出回って、消えていった。





 フルコピーで好きなのはカンパと同じイタリアのジャン・ロベルトである。最初に見たのはミラノの街中、停めてある自転車についていたものだった。どう見ても、鉄ハンドルの廉価もの自転車である。何でこんなものにカンパが?と思った。じっと見てみるとジャン・ロベルトである。この時の衝撃的な笑いは今でも覚えている。後年、新品を入手するが、鉄のプレスで、よくぞここまでやったと感心した。カンパを見習って、各所にジャン・ロベルトの刻印があるのも面白い。





 この数回、いろいろなディレーラーを紹介してきた。2000年以前には様々なメーカーが、オリジナルやコピー製品を作っていた。選ぶにも、使うにも、はたまたコレクションするのにもなかなか楽しい時代だった。時代が変わったと言えばそれまでだが、組み合わせて使うといった楽しみはなくなった。昔を知っていると、何だか少し寂しい気持ちになる。

第110回へ続く...

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