カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第105回

清ちゃんのコレクション(その20)ワイマン・951ブレーキ



 この青い箱、ワイマンのセンタープルブレーキである。ワイマンのブレーキと言っても、今の人たちにはすぐには分からないだろうと思う。スイスのメーカーである。今でもリムやホィールを作っているので、社名を聞いた事があるという人もいるかと思う。さて、このワイマン、日本のブレーキの発展にも深く関わっていた。





 今は株式会社ヨシガイとなっているが、その昔、吉貝機械金属というブレーキメーカーがあった。ブランド名は”ラッキーダイヤ”、アルミ製のキャリパーブレーキを早くから製造していた。ただ、1960年代、ブレーキを始め、まだまだ日本の自転車技術は欧州製に比べ未熟だった。アルミ製のブレーキにさえ”あおり止め(分かんないだろうなぁ)”が付いているものがあった。フランスにはマファック、イタリアにはユニバーサル、そしてスイスのワイマン、フランスにはCLB、イギリスにはGB等もあったが、この3社が欧州の高級スポーツ車をそれぞれに独占していた。



 そんな時代、吉貝はワイマンと提携する。ブランド名は”ダイヤ・ワイマン”、要はワイマン製品と同じものを国内で作っていた。数年間の間、製造することによって、その技術・ノウハウを蓄積していった。その後、カンパがブレーキを作り始めたことによってブレーキ業界は変化してくる。吉貝もオリジナル商品を作り始め、”ダイヤ・コンペ”ブランドを作り、ワイマンとの提携を解消する。このように日本のブレーキの発展に、ワイマンは貢献していた。



 今日、紹介するのは、お馴染みの#750や#610ではない。かって、スポーツ車に使われたものとは少し違う。左右のアーム部やチドリ部はアルミ製だが、後の逆Y字のチドリガイド部は鉄製である。取付ボルト部からシューまでの距離は75から95ミリくらいである。セットになっているブレーキレバーはフラットハンドル用のものである。欧州風のシティサイクル用だと思われる。650Bのタイヤも履けそうな幅がある。もちろん、泥よけを装着してもいいようになっている。



 80年代初頭、シマノがaxシリーズを発表した事を知っている人はこの写真を見て、あれ?と感じたのではないかと思う。アウター受けがブレーキ本体に繋がっている。その後、カンパも俗称”イカブレーキ”と呼ばれるCレコードを出した。いずれも失敗作として、サイドプルに戻っているが、あのまま発展していったなら、今はどうなっていただろうと思う。シマノ500の時にも書いたが、デュアルピボットとかいって、部品点数が増え、アームの支点が変えられていく。それならいっその事、センタープルにした方が効率もよくなるような気がする。そんな事を考えているのは私、一人だけなのだろうか?




第106回へ続く...

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