カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第106回

清ちゃんのコレクション(その21)サンプレックスOEM



 今回も皆さんがあまりご存じでないディレーラーの紹介をしたい。先ずはミケの80年初め頃のディレーラーである。横方向から見ると分からないが、前方向から見るとマークで分かるようにサンプレックス・スーパーLJである。パンタ上部に”SLJ5500”の刻印が見てとれる。スーパーLJ(以下SLJ)も細かい改良をしながら進化していっていた。5500の頃になると、上下のボルトがアルミ製になり、パンタ部に肉抜き加工を施し、重量的には初期に比べ、かなり軽くなってきていた。ボルトには黒アルマイト処理をしてある。単に5500にミケのマークを貼っただけに思える。



 プーリーケージは軽量化とは逆に、板厚は厚くなり、面取り等も少なくなって荒々しさがでている。実は今回、初めて気がついたのだが、このケージと全く同じものが、同時代のギャリのディレーラーに使われている。インナーのケージの形は違うものの、アウターは全く同一のものである。ケージの板の厚み、面取り、プレスの跡、アルマイトの色、全く同じである。プーリーにもサンプレックスの文字がある。それではギャリもサンプレ製なのか?と言うと、少し疑問が残る。



 その理由として、本体が全く違うのである。サンプレと違い、カンパのスーパーレコードを意識した構造。もちろんシングルテンションである。SLJと共用するパーツはテンションスプリング以外、何もない。上下のボルトも鉄である。一番の違いはパンタ部のピンである。サンプレの場合は鉄のピンを裏でかしめてあるが、ギャリの方は真鍮ピンで、裏はCリング止めである。4ピンの位置も微妙にサンプレとは違う。



 このギャリのスーパーレコード以前に愛用していた、もう一つのギャリのディレーラーがある。非常に軽量で気に入っていたものである。これにはサンプレのものは全く使われていない。ピンはCリングではないが、真鍮で頭の形状は後期のそれと同じである。かしめを含むアッセンブリラインはサンプレとは別のラインが必要になってくる。このような事を考えていくと、ギャリの場合、当初は自社で全てを作っていたが、後期になるとプーリーやプーリーケージ、テンションスプリング等をサンプレから供給してもらい、自分たちでアッセンブルしていたのではないかと推察される。



 たしか、この頃はジピアミもSLJにマークだけを貼り、コンポを揃えていたように記憶する。後期のサンプレはそんな意味では数社のOEMをやっていた。イタリアのコンポメーカーもシマノ攻撃で少し疲労していた頃でもある。チェンホィルやディレーラー等、モデルチェンジするにも金型やライン、多額の出費を強いられる。少しでも出資を押さえるためには他メーカーと部品を共用する事も仕方ない事だったと思う。



 それにしてもギャリはえらい!その中でもマークだけを変えるのではなく、オリジナリティを出している。今、欲しいと思うのはギャリの70年終わり頃のディレーラーである。初期のマビックのもののような角張ったものである。プーリーケージには社のマークを入れるために少し膨らみを持たせたデザインで、アルマイトの色、質感等、私好みのものであった。どなたか持っている方、おられませんか?

第107回へ続く...

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