カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第36回

清ちゃんのつぶやき(その27)ヘルメット



 先日、社内であれこれ話をしていた時、ヘルメットが話題になった。今のヘルメット、一昔前に比べると軽く、通気性もよくなってきた。カラーリングも豊富である。意外と皆が知らなかったのはハードシェル(外装のカラーリングが施してある部分)が安全のために重要な役割をしていることだった。



 ヘルメットの役目は転倒時に頭部を保護することである。衝撃に対しては内部の発泡スチロールがその役目を果たしてくれる。果物などが発泡スチロール(密度が違うが)で包装され運送されていることからもそれは理解できると思う。実際、今のヘルメットの原型を作ったジロの初期モデルは発泡材の上にヘルメットカバーみたいな布を被せたものであった。



 雨の日に落車した経験のある人だと分かるだろうが、路面が濡れているとケガが少ない。これは体と路面の間に水があり、摩擦が少ないためである。ケガをしないためには滑ることが必要なのである。そのため、ヘルメットの外装がハードシェルになったという次第である。



 頭部が滑ってくれないと首にダメージがくる。昔の写真でカスクと呼ばれる皮製のヘルメットのようなものを被っている選手を見たことがあるだろうか?あれはあれで、頭部を守る役目は果たしていたが、転倒時には首をやってしまう事も少なからずあった。



 ヨーロッパの選手はヘルメットが嫌いである。ツールでも少し前まではヘルメットをかぶっている選手は誰一人いなかった。走るだけなら、何も被らず走るのが開放感もあり快適である。それでもパリルーベみたいな危険なコースではカスクを身につけて走っていた。



 アメリカの選手や自転車、用品がヨーロッパのレースに進出するにしたがって、アメリカ人の好きなヘルメットがレースでも見受けられるようになった。レースそのものも高速化してきた事もあり、ついに主催者側からもヘルメット着用を選手側に義務化するように通達した。当初、選手側がいくつかのレースをボイコットした事もある。これは当然の事で、ヨーロッパの考え方は、安全危険の判断は自分たちでやる、押しつけの規則はいやだという考え方である。訴訟の国、アメリカとは違う(当時はアメリカ人のヘルメット姿をばかにしていた選手もたくさんいた)という、少しアメリカを軽蔑した意識もあった。



 今、皆、ヘルメットをかぶって走っているが、本音のところをヨーロッパ選手に聞いてみたい。レース時に脱いだヘルメットをサポートカーに渡している姿を見るたびに考える。レーシングキャップみたいに不要な時には後ろポケットにたたんで入れる事のできるヘルメット(カスクではできていた)があれば、ヨーロッパの選手にも素直に受け入れてもらえるのかもしれない。

第37回へ続く...

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