カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第335回

清ちゃんのつぶやき(その278) ビアンキ チタンロード



 九州は数週間前から暖かい日が続き、本格的な春になってきた。昼間気温20度を超える日もある、考えてみれば日本も広い、この時期、まだ雪が降っている所もあれば、桜の開花が始まっている所もある。






 さて、今日は前回のキャンピング車が入ってきた同日に受けたオーバーホール依頼の自転車の話である。オーナーはYさん、昔からの知り合いで、11月下旬に自転車を持ってくると言われていた方である。入院した自転車はビアンキ、Tiメガチューブロードである。1990年中期の頃のものである。






 確かその頃のカタログがあると思って捜すと1996年のものが出てきた。表紙はゲビスバランチームのエース、エフゲニ―・ベルティン、私の好きな選手でもあった。そのフォームのカッコよさ、今の選手には見当たらない。前傾姿勢がとにかくカッコよかった。タイムトライアルの映像など見ていても上半身がピタッと安定していて、美しくて見とれる程だった。金髪をなびかせて前を見据えるそのスタイルは独特の雰囲気をもっていた。






 そんな時代のビアンキのフラッグシップモデルである。ところが1996年のカタログのものとは少し違う。カタログのものはフロントフォークはコロンバスのELになっているし、シートピラーもレコードのエアロタイプになっている。今回のものはフレームは同じチタンだが、フォークはカーボン、メインパーツはカンパニョロのレコードチタンと云った時代の最先端の仕様である。少し年代がずれているものなのかもしれない。






 トライアスロンなどで使われていた形跡はあるものの、程度はいい。事情があり、長い間乗っていないと云う事で、埃も積もっていた。パーツを外し、フレーム単体にしてみる。さすがに時代を感じさせる。重たいのである。フロントフォークなどは今の初心者用ロードバイクに付いているものの方が軽い。カーボンと言えどクラウン部はアルミにカーボンを巻いてある。メインのチタンフレームにしても妙に重さを感じる。今のように大径フレームになった先駆けでもある。前三角は丸パイプで形成されていた、それがMTBの普及で太くなってきた(オーバーサイズと呼んでいた)。ロードでもその影響を受けた。そのうちにダウンチューブだけを更に太く、更に変形させて剛性を得る手法をとるものが出てきた。ビアンキではそれをメガチューブと呼んでいた。



 今回の自転車のダウンチューブだが、もちろんチタン製である。よく見ると塗装してあるが、上部に溶接痕がある。そう、一枚の板を曲げて溶接しパイプ状にしてある。それも上と下部では径が違う。今ではそのような造管ができるかもしれないが、当時、油圧やスエージングではできなかったのか、それとも生産数量の問題でこのような結果になったのかは分からない。ただ、あえて溶接面を見える上部にもってきたと云うのは衝撃によるダメージを少なくするためだと思う。



 その他、いろいろ見ていると興味ある部分もある。それにしてもこの頃って、まだ8段だったんだなぁと思う。機材の進化は早い。ともかく、今週から一カ月、かなり忙しくなる。一応、その前にオーバーホールは終えた。タイヤを装着していないのは、オーナーにタイヤを選んでもらおうと云うためである。当初、ブリヂストンのエクステンザのグリーン(意外といい!)と考えたが、ここまできて日本ブランドでもないだろうと思ったからである。



第336回へ続く...

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