カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第326回

清ちゃんのつぶやき(その269)人吉旅館



 正月最初の連休、人吉まで行ってきた。いつもはこの時期、霧島の温泉に行くのだが、今回はちょっとそれを変更した。実は先月、人吉旅館から一通の封書が届いていた。193回の「梅雨のツーリング」で泊まった老舗旅館である。新聞では知っていたが、昨年、国の登録有形文化財にこの旅館が認定された。それを記念しての15%オフのクーポン券が同封されていた。今回は冬で寒い(人吉は盆地で寒い!)のだが、梅雨の雨の時期よりましだろうと思い出かけることにした。



 今回は行きも帰りも晴れという天気予報を信じて出発した。ただ、乾燥した空気と北風は大敵である。とにかく八代をめざして進む。割と調子がいいと思っていたが、よく考えてみれば北風で追い風になっている。帰りの事を考えると少し憂鬱になる。八代市街に入る手前から妙見神社方面に左折、ここからは球磨川沿いの静かな道になる。トラックの多い国道と反対側の鉄道に沿った道をひたすら走る。ただ、この道、人吉まで途中に食堂やら店はない。自動販売機が所々にある程度である。






 昼も過ぎたので一旦、国道に出て道の駅で食事、全国初のダム撤去という事で話題になっている荒瀬ダムを横に見て、途中からまた川の反対側の道に戻り人吉を目指す。球磨川は広いし、長いと感じる。それに鉄道が柵もなく、すぐ横を電車が通っていく。乗客の表情まで見える。都会では考えられない風景である。本当に自転車にはうってつけの道だと思う。休憩を含めて6時間半で人吉市街に入り、人吉旅館に到着した。



 人吉は霧島に向かう時を含め、よく通っていた。天守閣等はないが球磨川沿いの城跡などは風情があり、街中のいろんな建物や通りにも城下町としての旅情を感じられる街である。以前から市内を横切る時に川沿いに見える人吉旅館は気になっていた。前回、人吉に着いてから、宿泊所を決める時にふと思い出して電話してみたのもそういった事による。その時は着いたのも少し遅く、じっくりと建物を探検する時間もなかったので今回は明るい内に早めに到着した。






 改めて建物を見るといい!何故か木造旅館には温かみやら郷愁やらいろんなものを感じる。磨かれて光沢を放つ木の廊下が歩くとぎしっぎしっと音をたてるのもいい。欧州などの何百年も経った小さなホテルなどでも外装は煉瓦や石だが廊下は木である。同じような感触がある。案内された部屋は本館の一番!部屋の指定ができないだけに、これは嬉しかった。昭和初期の部屋で雨戸や戸袋もある。球磨川を見渡せる窓の鍵も昔ながらの起こして手で回す方式のものである。木造の建物は使い込まれることによって艶が出る。





 今回は建物をあちこちとゆっくり見てまわった。昭和初期の宮大工の粋な造形が各所に盛り込まれている。本当に素晴らしい職人技に感心する。このような建物、本当に大切にしてもらいたい。いろんな内装設備等は現代風にしてあるが、欧州等の建物もそうで、外観や基本は昔のままで使い続ける、その事によって何百年と保っていけるわけである。



第327回へ続く...

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