カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第30回

清ちゃんのつぶやき(その21)ふれあい



 ゴールデンウィーク、いろいろな人がいろいろな所に出かけておられると思う。この時期の気候が一番快適である。雨にさえあわなければ楽しい旅行になると思う。海外に行っている人も多いのではないだろうか。今はティアグラ仕様のロードレーサーを買える価格で欧州10日間の旅行ができる。往復のチケットだけ買って好きな所に行くというのも手である。欧州にはスポーツとしての自転車が根付いている。街を歩いていても、郊外に行っても、自転車で走っている姿を見ることができる。



 欧州にはサマータイムがあり、日本では夜の時間帯でも明るい。仕事を終え、軽い食事をとってから自転車に乗る。そんな姿を見ることができる。おじいちゃんがロードレーサーやスポルティーフに乗って走っている様は本当にかっこいい。若い頃から乗っているのだろう、フォームもきまっている。年をとったら、あんな風になりたいと思う雄姿である。昔、初めて行った欧州で、空港から街中に向かうタクシーの車窓から2台で走るレーサーを見た。よく見ると、一人は三つ編み、一人はポニーテールである。女の子だった。文化が違うなと感じたことがある。



 言葉が大丈夫なら、10部屋くらいの小さなホテルに泊まるのがおすすめである。欧州にはこのようなホテルがたくさんある。昔からのホテルで、歩くと床がぎしぎしと音をたてる所もある。チェックイン時にバッグを足元に置く。手に持っていた自転車の雑誌をカウンターに置き、宿泊カードを書く。その時、おやじが手元の雑誌に目をやる。すかさず、「誰々(自国の選手の名)は今年、調子がよさそうだね」等と話すと、必ず返事が返ってくる。ここから話がもりあがる。チェックインだけで30分くらいかかったこともある。最後には、これが昔のオレだ!とばかりに、古ぼけた写真を見せる。ウールのジャージを着て、トロフィーを掲げているスリムな青年。今はお腹の出っ張りを撫でているが、元はレーサーである。こんな人がたくさんいる。皆、自転車が、レースが好きである。



 たった一人の、なにげなく知り合った人からいろいろ発展することがある。何しに来たんだ、仕事は何をしてるんだ?とかいった質問から、知り合いに自転車店をしているのがいる。こんな自転車を持っているやつがいる等を教えてくれる。店に行ってみると、こちらの事はすでに知っていて、あれこれ見せてくれる。たまたま、店に入ってきた常連客も加わって、オレの持っている部品を分けてやろうか等の話しに広がっていったりする。こんな風にして手にいれたパーツもいくつかある。



 手に入れたのはパーツばかりではない。お互いに自転車やレースが好きという共通のものを介しての、人間と人間の心のふれあいである。そのことで、いろんな事を知ったし、教えてもらった。想いおこしても、いろんな所で、楽しい人たちとふれあうことができた。これこそが旅をする一番の目的である。

第31回へ続く...

目次

清ちゃんへのお便りをお待ちいたしております。