カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第279回

清ちゃんのつぶやき(その227)エンドネジ



 店でフレームを触っていたら「そのネジ何ですか?」と聞かれた。無理もない、昔のクロモリフレームである。若い人が知らないのも当たり前、ネジというのはリヤエンドのネジである。今はスポーツ車に限って言えば、ストレートエンド(正確にはストレート・ドロップアウト・エンドと呼ぶ)がほとんどで、何で前方に後車輪を外すのか、ネジが何のために付いているのか分からない人が多いのではないかと思う。 



 知っている人にはばかばかしいかもしれないが、ちょっと簡単な歴史。チェンドライブの自転車ができて以来、車輪を外す場合には、後輪は後方向に外す構造になっていた。理由は簡単、チェンが伸びるからである。伸びたら後方向に引張って対処する。一般の自転車は今もそのような構造になっている。ところが外装変速機が出現してくると後方向には車輪が外しにくい。チェンを一旦外したら抜けるが、面倒である。そうして前方向に車輪を抜くという形式になっていくのである。



 それじぁ、あのネジは?と云うと、後車輪をフレームのセンターに合わせるための調整ネジなのである。これまでも書いたように昔のフレームは材質、精度共に今と比べると劣っていた。後三角なんて溶接後に歪むのが当たり前だった。それをカバーするためのものだった。時代が移るにつれエンドの調整ネジも徐々に短くなる。それだけ材質や技術も上がってきた証でもある。そうして現在の下方向に抜く形になっていった。



 ついでに言うと、下方向になった一番大きな理由はチェンステーを短くできない事にあった。レース形態が変化していったのである。ゴールスプリントや登りの掛け合いが多くなり、ショートホィールベース化が求められてきた。タイヤの空気を抜けば外せないこともないのだが、それではレースには対応できない。パンクして外すのはできるが、新しい車輪をフレームに入れてから空気を入れるなんて時間はない。そんな経過がある。ただ、ストレートエンドになってから、これまでも芯の項等でも述べたが、フレームの狂いが修正しにくくなってきた。アルミやカーボンのフレームでも短い調整ネジが付いていればと思うような時もある。



 そうそう、シートステー右側にある突起、先の若者、これも何か分からないと言っていた。昔のスポーツ車には当たり前のようについていた。後車輪を外した後に垂れ下がったチェンを引っかけておくものである。実際にやってみせると昔のものって便利なんですねと感心していた。逆に歳をとって再度自転車に乗ろうとする出戻りの中年男性などは今のフレームには付いていなくて戸惑う事があるようだ。戸惑うと言えば、前車輪がクイックレバーを回してもすぐに抜けなくて不思議そうな顔をされる。このような人達にやってあげるのがエンドの削りである。






 そういえば私も分からないのがフロントフォークのダボネジ。現在の中級クラスのクロスバイクにはメーカーに関わらずよく 付いている。何のため?と思う時がある。オプションパーツでフロントキャリアや泥除け、ランプステーとかが用意されているわけではない。メーカーによっては泥除け取り付けに利用している場合がある。ただ、この時、エンドには泥除け用のダボは付いていない。メーカーでは何と説明しているのだろう?今度聞いてみようっと!



第280回へ続く...

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