カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第275回

清ちゃんのつぶやき(その223)回転部



 前回のアウターバンドを捜している時に昔のデュラエースのフロントハブが出てきた。もしやと思い手元に置いておいた。後から別の所にあった箱を取り出して照らし合わせると、1ペアになった。十数年ぶりに一つの箱に収まった。7400シリーズの頃のものである。8段用、32Hのものである。36Hだったら次のツーリング車に使えると思っていたが残念!手にとってシャフトを回してみる。まあ、こんなもんだよな・・・。



 デュラエースの場合、それ以下のグレードのものに比べれば回転は非常に滑らかである。ボールの材質も違うし、ワンの強制研磨等の処理を施してあるから当たり前ではあるけれど、それでも昔味わったカンパのハブの滑らかさにはかなわない。何がと言われると困るのだが、指先が覚えた感触とでもいおうか、違うのである。あの、ぬるっとした感じがない。



 それでは、回転部の滑らかさに差があると乗り味が違うの?と言われれば、そんな事はない。多少ゴリゴリ感があっても差はない。乗っている分にはよほど神経質な人でも気がつかない。BBでもそうであるが、コッターレスの時代にはチェンを外した状態でくるくると回っていたクランクが今のホローテック2になった途端、回らなくなった。これでは抵抗があってスムーズなペダリングができないだろう、長い時間乗っていると体にストレスが溜まるのではないか等と懸念する声があった。確かに少し重たすぎるきらいはあるが、シマノでも説明している通り、さほど問題にはならない。



 要は気分の問題である。くるくると気持ちよく回転していると自分は他人より速く走れるのではないか、そんな気分になる。競技ともなるとそんなメンタル面での作用もある。屋内のピスト競技ではハブのグリスを抜いてスピンドル油を入れる。タイヤにも空気の代わりにヘリウムガスを入れる、それでコンマ1秒短められるわけではないが、そんな努力をしていることを選手に見せるだけでも士気は高揚していく。結果、コンマ1秒、タイムを短縮できることだってある。 



 自分自身、ハブの設計や試験にも携わってきたが、荷重をかけての試験でも性能的には変わらないと言っていい。変わるとすれば耐久性である。ローグレードのものになるとシャフトやワン、玉押し、ボールの材質や精度が違う。荷重をかけた場合、それらが微妙に変形する(コンマ以下2、3桁の世界である)それによって回転そのものや耐久性に差がでてくる。



 もし、自分でハブやヘッド、BBの回転調整をしてみようと思われる方、ガタはよくない、それだけは頭に入れておいてほしい。著しく耐久性は落ちていく。逆にガタさえなければわずかなゴリゴリ感が残っても差し障りない。シャフトを手で回しても回らないというのは行き過ぎだが、そうでなければあまり神経質になる必要はない。とまあ、そんな事は分かってはいるのだが、やっぱり気になる。自分の自転車では無駄な努力とは分かっているのだが、ハブの防塵ゴムを外したりして、できるだけ回転時の抵抗がないようにしたりしている。



第276回へ続く...

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