カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第260回

清ちゃんのつぶやき(その209)N君と荒尾・玉名サイクリスト集団



 玉名店によく来ている子でN君というのがいる。N君、実はまだ中学の2年生である。以前から時々来店していたが、今年の正月、お年玉がたまったからと自転車を購入した。車種はジャイアントのロードバイク。そんなに高額のモデルではない。ある意味、中学生にふさわしいモデルだった。寒い正月やら暖かくなり始めた春、金峰山などに走りに行っていた。



 こちらも中学生ということで少し気を使い、N君が店にいる時、誰か他の大人のサイクリストがいたら紹介していた。どこかを走っている時に見かけたら気にかけてほしいという意味だった。一人で走っていて、パンクしたり落車したりしていたら、面倒を見てほしいという事を伝えていた。まだまだ中学生、どこかでトラブルにあった時、対処の仕方に戸惑う事も、心細い思いをすることもあるだろう。そんな時、見知らぬ人よりも会ったことのある人が傍にいるだけで安心する。



 N君、彼のいいところは挨拶をすることである。店に入ってくる時も、帰る時も必ず挨拶をしていく。家が自営業で小さい頃から大人と接しているからだろうと思う。最近は高校生や大学生になっても挨拶できない子が多い。店に入ってからも黙ったままで、こちらが聞かなければ要件を言えない、そんな子も増えた。N君の友人で同じ中学のK君というのもいるが、こちらもきちんと挨拶ができる子である。



 話は少し逸れるが、玉名店ではお客さん同士の結びつきが始まっているし、形になってきている。自転車を購入し、最初は一人で走っているが、どこかで他の自転車乗りと遭遇する。たまたま休憩をしていたらとか、どこかのイベントに行ったらとかで知り合う機会もある。初対面でも共通の知人がいたりと共通の話題があったりする。そうやってカガワで買ったという共通点などがあると初対面ながらも話が弾む。



 そんな事で、たまたま店に居合わせた人達を積極的に紹介するようにしている。ただ、やみくもに紹介するのではなく、最低でも一人で50キロ以上は走れることや他の人に合わせて会話ができる人というのを一つの条件としている。そうやってメンバーも少しずつ増えて、10人くらいになってきた。時に何々サイクリングクラブとかの名称はないし、ユニフォームなどもない。自由参加を基本としていてクラブに束縛されることはない。



 N君をこのメンバーの数人に紹介しておいた。この中には高校生もいる。中学生と高校生、年も近いせいですぐに仲良くなった。高校生にN君を100kmは走れるようにしてくれるように頼んでおいた。二人であちこち走りに行くようになった。100kmは十分に走れるようになった。



 そうして、この夏、何人かで有明海一周&島原半島一周をしようという案が出た。もちろん時間の都合がつかない人は途中まで、または途中から参加といったことも可である。中学生も参加という事で周囲の人達は当初不安を感じたようだが、その時はその時とばかり、暗い早朝に荒尾に集合、出発した。午前中から暑い夏の陽射しを浴びながら4県をまたぎ走破。約200kmを走りぬいて、夕方のフェリーに乗り込んで帰ってきた。さすがにN君、疲れたようだが達成感は得られたようだ。夏のいい思い出ができたようである。もちろん今も走っている。最初来た頃は少々メタボ気味だった体もスリムになり、引き締まってきた。最近は走る以外にも、もらったフルクラムのホィールに自分で赤いビニールテープを巻いたりしてレーシング・ゼロに見せようと努力したり(笑)している。



 そんなN君だが、周囲の大人達が優しい眼で見守ってくれている。以前にも何度か書いたが、一人で走るのもいい。しかし、何人かで走るのも楽しい。いろんな事が学べるし、世代を越えての会話ができる。自分でも今になってつくづく思うが、自転車を通じて学んだ事や思い出がたくさんある。ある意味、自分自身の財産になっている。中学の頃、近所の高校生のお兄さんと島原半島に初めての一泊旅行に行った。そんな時の頃を今でも覚えている。人間とは、いい思い出をたくさん積み重ねていくために命を与えられている、そんな気がする。



第261回へ続く...

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