カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第238回

清ちゃんのコレクション(その43)ゼウスチェンホィール



 私のコレクションの中には皆さんがほとんど見た事のないものも含まれている。今回はその一つ、ゼウスのチェンホィールである。ゼウスと言えばスペインの総合メーカーでディレーラーやハブ、チェンホィール等を製造していたメーカーで、これまでにも何度かとりあげた。カンパのそっくりさんで日本にも以前は入ってきていた。ところが入ってきていたものはクリテリウム(カンパのレコードにあたる)クラスのものだけで、その下のグレードはほとんど入ってきていない。



 写真のものは約20年ほど前に入手していたものである。経緯を説明すると長くなるし、迷惑を被る人がいるので省略するが、所謂、ジャンク品の中に入っていた。入手先は海外の卸問屋とだけしておこう。かなりの数と種類の品物を買ったが、その中には完成品ではないものも含まれていた。プーリーが外されたディレーラー、QRシャフトのないハブ、片側だけしかないブレーキレバーといったようなものである。もちろん選んだのは私だが、その中には珍しいものも混じっていた。その一つが今回のチェンホィ−ルである。実は左クランクはない。おまけにチェンリングを止めている5つのボトルの内、1個がない(スペーサーも当然ない)。



 このチェンホィール、年式としては結構古いと思われる。日本にゼウス製品が紹介された1970年頃のものと推測する。先ず、5ピン形式のクランクがそれを物語る。現在ランドナーを作る人達が欲しがっているTAシクロツーリストと同じ形式である。フランス国内でも60年代にはレーサーにも使われていた5ピン方式クランクは70年代になると徐々に使用されなくなってきていた。アームとクランクが一体になったカンパ形式が一般化してきた。国粋主義のプジョーは同じくフランスのストロングライトのチェンホィールを装着していた。そんな時代の頃のものだと思う。



 それに歯数、52×45Tといった組み合わせである。昔のものは歯数差が小さい。当時、39Tを付けていたなら「ツーリング車か?」等とからかわれていた。出たばかりのジュラエースだって39Tインナーで出荷される事は少なかった。せいぜいスポルティーフに使うくらいだった。今では信じられないかもしれないが、初期のジュラエースにはチェンガードの付いたものも用意されていた。



 クランク長さは170ミリ、クランク裏に刻印がある。その側にはBSCの文字、ペダルネジの表示である。クランクやチェンリングはピカピカに研磨し、薄いアルマイトをかけてある。今はこのような部品を見る機会も少なくなってきている。ちょっとレトロな自転車に使ってあるにすぎない。それでも今回の角ばったクランクを見ていると隔世の感がある。幸いノーマークの同じような形の左クランクも持っている。昔風のクラブモデルでも組めばかなり様になるかもしれないと想像を膨らまされる。



第239回へ続く...

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