カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第22回

清ちゃんのつぶやき(その14)タイヤ(2)



 ”タイヤは命をのせている”某タイヤメーカーのCMコピーである。趣味で自転車に乗っている人達にとっても関心のある部品だと思う。ほんのわずかな接地面積でその性能を発揮させなければならない。時速100キロを超える速度であれ、荒れた路面であれ、自転車を安定させるという使命をおびている。とても重要な部品である。



 実際、強い選手や走りこんでいるサイクリストは走りに応じた、いいタイヤをはいている。良いタイヤ、これは体感することができる。以前、競技用はクレメンという時代、同社のクリテリウムを試合本番に使っていた。少しお金に余裕ができた時、クリテリウム・セタ(コードが絹:セタというのは絹の意)を使ってみた。明らかに違った。平地を走っている時は分からなかったが、伊豆CSCの二号橋、下りのコーナーリング時に外に膨らむ選手の群の中、あれ?行けそうだと感じ、イン側を走ると滑る感触もなく通過することができた。周回コースだったので周回の度、試してみた。時速80キロくらいの速度でインの縁石ぎりぎりのところを不安なく走れるのである。この時に良いタイヤとは限界時にその性能を発揮させるものだということを知った。



 勤め始めてから金銭的に余裕ができた時、クリテリウム・セタ・エキストラという、当時、一本、16000円位する最高のタイヤを買った。ホビーレースで60キロくらいしか使っていなかったが、国体で使うからホィールを貸してくれとT君が言ってきた。実業団チームのリーダーである。貸すと、国体が終わっても返ってこない。他の国体メンバーに聞くと”Tさんは途中リタイヤしましたよ”とのことである。こちらも次のレースが控えていたので催促すると戻ってきた。パンクしていた。リタイヤの原因が判明した。今では笑い話だが、1キロにつき250円以上使っていたことになる。でも、安心して走れた良いタイヤだった。ただ、寿命は短い。当たり前だが、レース用とはそんなものである。



 レースをしていない人でも、走っていると急に人や車が飛び出してくる場面に時折遭遇すると思う。そんな時、良いタイヤは止まれたり、障害物を回避することができる。ホィールがロックしたまま滑ることを経験したあなた、一度、良いタイヤを使ってみることをおすすめする。もう、もとのタイヤを使う気にはならない。ただ、良いタイヤ、外観から見分けることは難しい。価格が一つのめやすである。レース仲間の話も参考になる。いろいろなタイヤを試して、自分の走りに合った良いタイヤを見つけだすことである。



 ときおりジュラエースを装着して安いタイヤを使っている人がいる。それも減ったタイヤである。それより、ソラを装着していても良いタイヤを履いている方がいい。タイヤは消耗品と割り切って、頻繁に交換したほうが安全だし、安心である。また、走る前、走った後は必ずタイヤを自分でチェックすることも忘れないでほしい。昔、欧州のプロが出走前、タイヤだけは細かくチェックしていたのを思い出す。意外とプロは機材に無頓着なのが多いのだが、それでもタイヤだけには気を遣っていた。



 仕事柄、いろいろな人のタイヤを見ることが多い。タイヤの減りかたによって、どのくらい走っているのか、どんな走り方をしているのか、更にどんな性格の人なのか、癖や人柄まで読み取れるときもある。ある意味、恐い部品でもある。



 何度も言うが、けちけちせずに、タイヤだけはいいものを使った方がいい。安心・安全な走りができる。それだけは確実である。

第23回へ続く...

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