カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第218回

清ちゃんのつぶやき(その171)宿



 道後温泉に行った際、宿泊場所はすぐに決まったと書いた。旅行していると、いつもそうだが、その夜の宿泊先が決まっていないと妙に不安になる。これは国内外を問わずである。これまでも心細い思いを何度も体験した。その内に宿捜しのポイントというか秘訣が分かってきた。今回はそんな事を述べてみたい。



 最初っから宿を決めていれば全く問題ないのだが、私の場合、途中で予定を変更したりする事がままある。これが自転車の旅行だったりすると、それ以外のケースも増える。途中でパンクしたりとか、上りが予想以上にきつかったり、未舗装路があったりなどと距離が意外と稼げないといった場合である。やたら事前に計画をたてていても何かあった場合、その日の宿泊先が決まっているとそれに合わせなければならない。結果、知らない道を(途中に興味あるものを見つけても)宿泊先まで黙々と走り続けるといった走行になりかねない。これではせっかくの旅も楽しめない。



 そこでどうするかと言うと、宿を決めずに出かけて、午後4時頃に決めるわけである。その頃になると自分がこの先、どこら辺りまでなら無理なく行けるか想定できる。それにその頃であれば宿泊先でも夕食の準備ができる。これは野宿の場合も同様で、暗くなる前に宿泊地を決めて到着しておく事が旅を楽しいものにしてくれる。



 さて、道後のように昔からの温泉地で宿泊先を捜すのは楽である。明治以前からの、古くからの温泉は今と違ってポンプで汲みあげしない自噴泉である。そこに湯船を作り、湯小屋を作る。そしてその周囲に湯治客用の宿ができていく(宿ごとに温泉は引かない)と云った形態になっている。そんな名残があるために温泉周辺には宿は多い。大小さまざまある。あとは付近を自転車で一周しながら、その時に見合った宿を見つけて声をかければいいのである。



 今回は平日だったので全く問題なく一発で決まったが、これが正月やお盆休み、ゴールデンウィークでも一人なら何とかなる。10室未満の宿ならともかく、部屋数が多いホテルや旅館であれば満室になる事はない。と言うのが大株主や大得意客からの依頼があった場合に備えて数室は空けてある。



 実際、昔、ゴールデンウィークに関西に行った時、電話帳片手に10件程に電話した。全て満室だからと断られた。気分を取り直し、食事でもして落ち着いて考えようと思い、当地名物のステーキ屋に行った。食事をしながら店の人と話していて、今夜の宿がないと言うと、店の人が知っているホテルがあるというので連絡してもらった。結果OKである。ホテルの名前や電話番号を書いたメモを渡されて愕然とした。先ほど電話で断られた一軒だった。東北でも同じような経験をした。



 そんな具合で、宿が見つからない場合は地元の人に話を持っていくのも一つの手である。観光地周辺は無理だったが、少し足を伸ばした郊外に穴場の宿があったという事もある。ビジネスホテルも土日にはあいているので観光で利用する人も増えた。最悪の場合、泊めさせてもらえるならラブホテルという方法もある(知り合いで男2人で泊った者がいる)。また、本当に満室の場合、断られた所で他の宿を相談するといった手もある。あそこなら空いてるかもと電話してもらい、泊まる事ができた経験もある。業者間の情報は正確である。もちろん観光案内所を利用しても構わない。



 また、断られない秘訣の一つに、宿の人に声をかける前に身だしなみを整えると云うのもある。自転車旅行というと、時には貧乏旅行と思う人もいる。そのため事前に自転車も簡単に掃除する。声をかける時も努めて謙虚で明るく振舞うようにする。相手も人間、汚れた自転車でホームレスと見まごうばかりの格好、暗い性格だと空いていても泊めたくないと思う。その辺りの心理面も考慮して宿捜しをすれば洋の東西を問わず必ず見つかる。



第219回へ続く...

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