カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第207回

清ちゃんのコレクション(その40)カンパニョロ・デルタブレーキ



 先日、知人からカンパのデルタブレーキを譲ってくれないかと言われた。幸い、新旧共に余分に所有している記憶があった。今回は本体だけという事だったが、レバー付ブレーキセットの箱入りもある。時間をもらって捜すことにした。幸い手前の数箱を動かしただけで出てきた。初期型とその改良型である。今、手に取って見ると時代を感じさせる。カンパとしては結果的には失敗作と呼ばれる製品だが、その造形や加工技術等には人を魅了するものがある。



 通称、デルタブレーキ、その形から日本ではイカブレーキとも言っていた。それまでのスーパーレコードのフルモデルチェンジである。グループはレコードだが、それまでのレコードと区別するためにフルモデルチェンジされたものはCレコード(コルサレコード)と呼んでいた。それまでの角ばったデザインから流れるような流線型のデザインになった最初のグループセットである。出たのは1980年代半ば、賛否両論があった。先に書いたようにがらりと変身した。保守的な人達にはすぐに受け入れられなかったし、革新派には絶賛された。今、考えるとこれがカンパ製品の流れの一つの分岐点だったと思う。



 1980年初頭、シマノがAXというコンポを出した。これまでにも何度か取り上げたが、エアロダイナミクスをウリにした画期的なコンポである。商業的には失敗作だったが、そのオリジナリティやコンセプトはカンパをはじめとする他メーカーに多大な影響を与えた。カンパもCレコードにはその影響が見られる。今回のブレーキもそれまでのサイドプルからAXの影響を受けてセンタープルになった。個人的にはCレコードは重量と価格が増したため、すぐに購入とはいかなかった。購入前に展示品や展示車を見てからと入手までには時間がかかった。



 まず気付いた事は引きの重たさである。それにワイヤーの取り回し。どんなにアウターをいじってみても引きの重さの解消には至らなかった。ワイヤーを三角の蓋を外して取り付けるが、その末端を切るのにも苦労した。ヨーロッパのプロメカニシャンは大変だろうなという思いがした。それに肝心なのが小さいフレーム用には設計されていなかった。フロントはともかく、リヤに付けるとアウターストッパーとシートピンの距離が接近する。引きの重たいブレーキが更に重たくなる。シューの面積も小さくなり、制動力もいまいちだった。



 ヨーロッパでも同じ苦労があったようで、カンパでも生産中止した旧レコードのサイドプルをデザイン変更してコバルトブレーキを併用して販売した。その間、デルタブレーキも改良していった。ただ、新旧比較してみると共通部品がほとんどない。引きの軽さを改良していくと内部のパンタグラフアームを大きく(長く)しなければならない。そのため本体そのものも大きくなる。ブレーキシューも元のように接触面積が大きくなった。ワイヤー取り回しも改良され使いやすくなった。



 最初っからこれで出していればその後のブレーキの流れはセンタープルに変わってきただろうと思う。改良され新型になり良くなったものの、時すでに遅し、時代はサイドプルに戻っていった。こうして見ていくと出ては消えていったブレーキもいくつかある。個人的にはモドロやCLBも好きだった。そんな目で見るとデルタブレーキの造形は奥深い。



第208回へ続く...

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