カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第201回

清ちゃんのコレクション(その39)コルナゴ・スーパー その2



 そのまま就職し、自転車に乗る時間はなくなってきた。ただ、学生時代に比べれば、お金にはそこそこ不自由しなくなっていたものの、さすがに外車は買えず、国産オーダーを繰り返していたし、それなりに満足していた、そんなある日、横尾双輪館に行った。ここは佐世保に住んでいた頃、初めてオーダーした老舗店である。その後、就職して東京に住み、同店には近くなった。実業団チームを作った時も東京都車連の窓口になっていて度々訪れていた。そんな時である。一台のロードフレームが壁面に展示してあった。聞けば新古品で価格も安かった。それがコルナゴだった。



 その頃、、杉野安氏がNC誌でデローザを紹介し、デローザの方が人気が出てきていた。コルナゴと言えばエディ・メルクスが使っていたという事で定評はあったが、そのメルクスがデローザに乗り換えたという事もあって、デローザ人気の方が上昇してきていた。現ナガサワの長沢氏がデローザにいたこともあって、雑誌でも特集を組んでいた。イメージとしてはクローバとハートマークのように硬派のコルナゴ、ソフトなデローザといった感じだった。とにかく、そんな時代のオレンジ色のコルナゴ、次の週までと予約して帰った。



 1週間考えた挙句、購入した。東武線の電車で輪行袋に入れて持ち帰った。それまで乗っていた自転車のパーツを移し替えた。この頃のコルナゴにはグレードはなかった。完成車にしても、チェンリングの穴あけやWレバーの肉抜き、シートピラーの溝切りといった具合でコルナゴマークはフレームのみだった。



 思い通りの乗り心地で満足していた。初の長距離上りは日光から金精峠までだった。走る量が減って、体力は落ちてきていたものの、ホビーレースには参加していた。そんな時期でも上りだけはまだ得意だった。パーツも少しずつコルナゴマーク入りのものが出始めていたのでそれらと交換していった。購入して数年経った頃、何気にいきつけのTサイクルで「死ぬまで走ってみたいね」と言った。ところが、そこのチームのT君が今度、新潟の糸魚川・東京間を走るという。距離的には約350km、便乗させてもらうことになった。



 糸魚川と聞いてちょっと気になった。20歳前、キャンピング車で北海道を目指し、旅行をしていた。ところが、糸魚川で出てきたクルマにぶつけられた。ぶつけたクルマの方は、こちらが怪我をしていない事を確認して去っていった。自転車を見ると前リムが曲がっている。市内の自転車屋さん数件に電話をかけても当時650Bのリムなんてどこも持っていなかった(これを機にこの後に作るツーリズムは26x1-3/8リム:650Aにする事になる)。仕方なく大阪まで列車で行き、そこで修理して旅を続けた。そんな、苦い経験のある、ある意味、忘れられない所でもあった。



 夜に東京を発ち、クルマで新潟を目指す。朝方まで寝て出発である。とにかく良い天気だった事は覚えている。T君とはつかず離れずといった調子で長野を過ぎ、山梨に入る。途中、何度かマッサージを受けながらも調子は良かった。食事はもちろん走りながらである。東京に入ってからT君が先行したので、それまで付いてくれていた伴走車を先に行かせた。立川付近での事である。新宿まではもう少しのところだった。それから5分も経たない頃、対向レーンの右折車がいきなり前を横切った。カンパのブレーキも間に合わず激突。人間の方は汗のおかげでボンネットの上を滑り、フロントガラスにぶつかって止まった。幸い、怪我はなかった。コルナゴの方はと言うとフロントフォークが曲がり、ダウンチューブにも皺ができ、車輪も曲がっていた。ブレーキレバー、ペダルにも傷が入り、曲がっていた。皆が待つ新宿までは交番からタクシーで向かった。タクシーの中で考えた事は、完走できなかった悔しさより、糸魚川はやはり自分にとって鬼門であったという事である。



 その後、相手側からの保険金が入った。そこでまた、コルナゴを購入したいと思った。数件まわったが、小さめのフレームがなかなか見つからない。誰かの話で立川の(因縁深いなあ)Nフレンドにあるんじゃないかと聞いた。御主人が小柄なので結構小さめのフレームも多数置いてあったという事である。顔なじみでもあったので行ってみた。コバルトブルーのコルナゴフレームがそこにはあった。サイズ、色共に申し分ない。エンドもショートのロードエンド、チェンレスト(55回口絵写真参照)も付けられるようになっている。クラウンやフォークの補強版、ヘッドラグやハンガー等、クローバマークに彫られ、黄色の色注しをしてある。手のかかっているフレームである。即、購入してオートバイの後ろに積んで帰った。



第202回へ続く...

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