カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第199回

清ちゃんのつぶやき(その158)コミュニケーション能力



 お客さんの一人で、先日、福岡のプロショップに行ったという方がある。まだ初心者でいろんなものを見て見たいということで、雑誌を見て行かれたらしい。実際、住まいは大牟田で福岡県に属する。「どうでした?」という問いに、「高い自転車が置いてあって楽しめたが、雰囲気が違っていた」との答えであった。初めての店に入るのには少しの勇気がいる。特に一般の自転車店と違ったプロショップだと最初は入りづらいかもしれない。いらっしゃいませという言葉は掛けてくれるが、店主や店員の方から近寄ったりはしない。初めての人は少しとまどいを感じるかもしれない。



 これは日本国内だけでなく、海外の店も同様である。自転車屋だけでなく、一般の店も同じである。食事をするためにレストランに入る。日本みたいに黙っていても水を持ってくるとか、オーダーを取りに来るとかはない。水が欲しければ水を注文しなければならないし、メニューを見て、注文するものが決まったらウェイターやウェイトレスを呼ばなければならない。レストランだけではない。知人の家に行って、黙っていてもお茶やコーヒーが出てくるわけではない。万事が万事そうである。ある意味、気を使わなくて済むし、気を使わせなくて済むので楽である。日本でも、他の業種でも専門色が強くなればなる程、この傾向は強くなる。



 日本にあるプロショップ、これも西欧型といえる。今までにいろんなショップに行った。その内にこれは何でだろう?と疑問が出でてきた。考えると一つの結論に行きつく。それはコミュニケーション能力があるか、ないかを試されているのではないか?そんな事を感じた。自転車に乗る、レースに出る、ツーリングをする、近くをサイクリングする、初心者は大きな意味でのサイクリング人生に踏み入るわけだが、一番必要なのは人と人とのつながりである。その手段がコミュニケーション能力である。



 俺は一人で走るだけだと思っていても、走っていてどこかで休憩をする。そんな時、他のサイクリストから話しかけられたりする。少し会話すると同じような一人走りである。その内、休みが合ったら一緒に走ろうとかの話になる。レースを志そうとしても、何らかのチームに俗さなければならない。チームメイトとの連携、これが重要になる。チームレース(チームタイムトライアルやトラックの団体追抜)を見ていても、強い選手がいるところが必ずしも勝つとは限らない。特別強い選手はいないのだが、妙にまとまっているチームが優勝をさらう時がある。また個人参加でもレース中、集団では他の選手とコミュニケーションをしなければならない。先頭集団を追いかける時などは所属の違う、他のチームの選手達との連携が必要になる。



 ツーリングをしていても同じである。反対方向から来たサイクリストとの会話の中で、この先の道がどうなっているのか、互いの情報を取り交わす。それだけでそれからの心構えが出来、安心して旅を続けることができる。黙っていては何もできない。自分から声を発することが重要ではないかと思う。そのことで自分自身の自転車人生が楽しくなる。プロショップにしても自分から質問や話題などを言うことによって楽しい買い物ができるようになる。そんなちょっとした勇気が、能力が試されているのではないか?そんなことを考える。世の中、我が子を殺したりといろんな事件が起きている。自分から声を発することのできない人がこの頃、増えているような気がする。



第200回へ続く...

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