カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第194回

清ちゃんのつぶやき(その153)芯(その2)



 前回の御約束通り、今回は芯の話である。芯の事を書いた後、数人の方からメールを頂いた。また、来店してその話をした方々もある。皆さん、同じような事を考えておられるようである。前に書いたように前後の車輪が一つの線上にある。それが何ミリずれているのか、何ミリまではOKなのか、ずれているとどうなるのか、そんな疑問を抱いておられるようである。プロショップでも測定できないならば、どうしたら分かるのか、そんな疑問もあるようだ。



 何ミリずれているという以前に、前車輪が左斜めに、後車輪が右斜めになっているという可能性だってある。こうなってくるとお話にならない。ただ、市場に出回っているものにはこういったものもある。芯の話にはフレームの正確さ、フロントフォークの正確さ、もちろんこれには車輪を固定するエンドといったものも含まれてくる。先ずはエンドである。左右エンドが平行になっていなければ正しく車輪を固定する事ができない。そのためにホーザンやパークツール、カンパニョロにシマノといろんな会社からエンド修正工具が販売されている。逆に考えると、いろんなところが出しているというのはそれだけ需要があるからである。つまり、修正しなければならない自転車が多いという事の裏返しかもしれない。



 手持ちの自転車に車輪を入れ、クイックレバーを締める。車輪がスムーズに入るか、また、エンドとクイック本体が平行に当たって締まっていっているか、そこら辺りでもエンドの平行度が少しは分かる。エンドとロックナットの隙間は1ミリか2ミリ位が理想的である。後車輪の場合、シートステーの上のブリッジ付近で車輪との隙間が左右対称になっているか、もし、なっているならチェンステーの下ブリッジ付近の寸法はどうか?という事もチェックする必要がある。実は時々、少しずれているものを見かけることがある。10万円を超える自転車でも例外ではない。同じようにフロントフォークも車輪を入れて、車輪をあまりこじらずにスムーズに入るかどうかという点をチェックしてほしい。



 そうそう、フレームがどうのこうのと言う前に車輪そのもののセンターが出ているのかをチェックする必要もある。これが狂っていればいくら正確なフレームでも何にもならない。先ずリムの振れ、これは一般的に1.5ミリあれば安定した走行に差し支えないと言うことだが、この数値、車輪全体に言えることである。センターを含め1.5ミリ以内であれば大丈夫だと言える。



 このような芯の話を書くのには訳がある。以前、並木坂店にいた頃から気になっていることだが、狂ったフレームを時折見かけるからである。修理で海外ブランドの高価格車のタイヤ交換や変速調整等をする。何か少し変だと感じることがあった。転倒した事は?と聞いても、ないという返事である。廉価ものや一般車ではよく見かけていたが、それは納得できる。ホームセンター1万円以下のもので売っている物なんかひどいものがある。ただ、現在、数10万円もする自転車にもそのようなものがあるのも事実である。



 今、自転車はほとんど輸入モノである。昔の日本であれば製造ラインから抜き取り検査を経てチェックされていた芯の狂いだが、製造ラインは台湾や中国である。日本での販売会社でチェックする測定器具を持っているところなど多くはない。BSのように自社に器具があれは中国製造のフレームでも測定できる。しかしながら、海外ブランドモノを取り扱っているところは、ほとんどが商社機能だけで、台湾・中国から入ってきた自転車の箱を港の倉庫から卸しや小売店に発送するだけの輸入業務しかやっていないところが増えた。メカニックルームを持っていても組立場を兼ねたピットで大きな測定機器や検査の機具は置いていない。肝心のチェックは製造元のメーカー頼りである。



 台湾でも有数のメーカーでも時折、製造ミスはある。昨年もシートステーブリッジが設計より下に溶接され、タイヤによってはブレーキ本体に当たるという車種も出た。これは氷山の一角で細かいことはたくさん起こっているはずである。まだ、このメーカー、ちゃんとした日本の販売会社があったから対処もできた。他の中小メーカーだと何が起こっているのか想像もできない。そんな製造メーカーに日本の技術者が常駐しているならば何か起きても早めに対処できる。ところがそんなところなど極まれである。自転車メーカーの基本はきちんと図面通りに、芯の出たフレームやフォークを作ることに尽きる。持ち込み修理や組立をしていて最近感じることである。



第195回へ続く...

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