カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第171回

清ちゃんのつぶやき(その130)雪



 10日程前、熊本市内にも雪が積もった。幸い雪質がさらさらしたものだったので道路にはあまり積もらず、昼からの日射しも手伝って夕方には溶けてしまった。それでも朝からの景色は水墨画を見ているようで幻想的だった。同じ熊本でも阿蘇や五木に住んでいる人には何てことのない景色かもしれないが、市内では数年ぶりだった。それでも結構、感動して、いろんなことを思い出した。



 自転車で雪道を走ることはこれまで何度もあった。雪の降る中、会社から戻ってシクロクロスの自転車を引っ張り出し、夜中に近所を走り回ったりしたこともある。関東に住んでいた頃のことである。雪道を走るのであれば轍をトレースするするように走るのが鉄則である。それを外れた途端、転倒する。タイヤは太い方が有利になってくる。プロックパターンのタイヤを履いた本格的なマウンテンバイクなどでは楽しめると思う。もちろん急ブレーキや急加速は厳禁である。新雪の場合は道の真ん中を走るようにする。そうしないと端は側溝等に雪が被さっていて危ない。



 社会人になって数年経った頃、仕事もそれなりに忙しくなり、自転車に乗る機会が少なくなった。これではいけないと思い、月に一度は、どこかに出かけるように努めた。盆休み、正月休みには長距離を、その他の月には日帰り、または1泊のツーリングに出た。ちょうど今頃の季節、日光まで輪行して日帰りの予定で中善寺湖まで走り始めた。いろは坂まではたいしたことなかったのに、途中からいきなり積もっていた。それでも進んでいるとふわふわと雪が舞ってきた。湖畔まで来た時には一面雪景色。観光客は誰一人いない。店も早じまいしていて静寂だけがあった。湖畔で一人、缶コーヒーを飲みながら雪の降る湖を眺めていた。怖いのは帰りである。日光駅まで戻るにはほとんどが下り、ヘアピンカーブの連続である。ハンドルから一瞬も手を離す事ができない。駅にたどり着いた時の安堵感は忘れられない。



 一番壮絶な思い出は道志から山中湖に行ったときである。相模原から道志まではちゃんと走ることができた。ところが道志あたりから雪が降ってきた。なおも走り続けていると10センチくらい積もってきた。道志を越え山伏峠に立つと山中湖全体が銀世界。膝あたりまで雪が積もっている。この中を自転車が走れるはずもない。走っても泥除けとタイヤの間に雪が詰まって車輪が動かなくなる。雪が非常に粘っこい。それを取り除いて走っても50メートルもすればまた動かなくなる。ギヤチェンジしたらチェンが外れた。見れば歯先に雪が固まり、氷になってしまっている始末である。少し走っては雪を取り除いたり、担いだりしながら湖畔の目的地に着くと帽子からはつららが下がり、変速機は氷で固まっていた。たった5,6キロを2時間近くかかってしまった。そんな事を今回の雪は思い出させてくれた。

第172回へ続く...

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