カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第151回

清ちゃんのコレクション(その34)シリカ



 やっと熊本も暑い、暑い夏が過ぎ去り、朝夕、過ごしやすくなってきた。全国の天気予報を見ていても分かるが、鹿児島や沖縄よりも暑い日がある。九州なので暑いのは当然と思われがちだが、冬は寒い。九州の他の県より数度低いと云った日が多い。今が一番いい季節かもしれない。そのせいか、このところ街中や郊外でもロードレーサーに乗った中年男性をよく見かけるようになった。街中は通勤の足として、郊外ではレクレーションとして乗っている。



 このところ、ロードレーサー等が売れ始めて、説明しなければならないのがフレンチバルブの空気の入れ方である。昔、クロモリのチューブラー仕様のロードを持っていたという人には説明不要だが、中年になって新しく自転車を購入といった場合には慎重になる。若者でもそうだが、初心者が良くやるのは先っぽのねじを折ってしまうこと。それに携帯ポンプでバルブ部を押さえないから、バルブ根元をやってしまうことである。フロアポンプでも使い方を誤ると同様なことが起きる。



 ものもちがいいと言われるかもしれないが、昔の携帯ポンプが何本か出てきた。写真では5本だが、ツーリング用にゼファールが2本、ドイツ製の短いものが1本、それに普段自転車に装備している流行りのショートのものが2本と、覚えているだけでも10本はある。その他にフロアポンプが5本ばかりある。この中にはオートバイ用も含まれる。普段はシリカが愛用品である。とにかく、耐久性がある。以前、実業団チームで使っていた時もシリカだった。選手のピストやロード、スペアホィールと練習や試合でも一日でものすごい使い方をする。一シーズン使ってもパッキンが痛まない。スペアのパッキンも工具箱には用意していたが、エア漏れがなく、とにかくよく耐える。



 写真の中にも2本のシリカがある。一本はカンパの角付きアダプター、もう一つはその後の樹脂製アダプターのものである。ロードにはシリカを使っていた。理由は高圧で空気を入れる場合、本体が樹脂のせいで熱を感じにくいという点であった。国産のプリマスも写真には写っているが、ツーリングや普段用にしていた。高圧になると本体が熱くなるのがいやだった。ゼファールは本体のアルミの薄さが好きではなかったが、アルマイトの色が豊富で3本程持っていた。シリカも色が豊富だった。数本持っていて、気分で使い分けていた。



 昔、レーサーはダウンチューブにボトル、シートチューブにポンプを付けていた。ツーリング車はこの逆だった。走行中、2本のポンプを壊した記憶がある。一本はシリカ、何をしていたのかは覚えていないが、走っている最中にポンプに手が当たり落としてしまった。道路の左端に自転車を止め、拾おうと後ろを見た瞬間、後ろから来たダンプカーに目の前で轢かれてしまった。無残な形になったポンプからカンパのアダプターだけ外して帰った。



 もう一つはツーリング車、ゼファールのポンプを付けていた。伊豆の山道を走っていたら犬が吠えながら追いかけてきた。かなり走ったものの、しつこくついてくる。襲いかかりそうになった時、走りながらポンプを外し、そのポンプで殴った。おかげで犬は退散したが、その後ポンプを見ると、くのじに曲がっていた。全く使い物にならず、フレームにも戻せずにその後の旅を続けた思い出がある。某誌で同じような紀行文を見つけた時は笑った。きっと薄いアルミ製のゼファールのポンプだったに違いない。そういえば、放し飼いの犬もあまり見かけなくなったし、野犬も見かけない。今のポンプだとこんな経験はできない時代になってしまった。

第152回へ続く...

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