カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第14回

清ちゃんのつぶやき(その10)センス



 自転車というのは不思議なものである。同じフレームに同じ部品を組み付けても、人によって出来上がりが違う。高級カーボンフレームにカンパレコードやジュラエースを組み付けていても、何か変だと思う自転車もある一方、普及アルミフレームにティアグラを組み付けているのに妙にわくわくするような自転車もある。シートピラーの出具合、ハンドルのセッティング、それらとフレームサイズとのバランス、変速やブレーキのアウターの取りまわし、いろいろなものが加味されて、全体的なバランスを保っている。更に泥除け付きの自転車だと、その長さやステーの角度も重要である。


 このバランス、例えば、フレームサイズが何ミリの場合、シートピラーの出具合何ミリといった数値が一概には言えない。サドル形状やシートピラーのメーカーによっても違う。どこがどうだといったものではない。これを眼で見、微妙な組み付けをやっていく。感覚の世界である。これがセンスである。このセンス、努力して得られるものと、天性のものがある。努力して得る一番の方法は、いいものをたくさん見ることである。いいものを見続けていれば、そうでないものがすぐに分かるようになる。


 展示会では各社、自信を持った自転車を見ることができる。組み付けにしても、かなり気を使ってある。展示車が多いメーカーだと、これは三人で組んだなとか、二人で分けて組んだとか分かることも多い。インナーワイヤー一つとっても、人の癖が出ていて面白い。時にはセンスのある人を雇っているなぁと関心する事もある。調べてみると知人だったりする。


 店のショーウインドウに展示されている、たった一台の自転車を見て身震いするような事も数回あった。12年前、フランスの店だが、スポルティーフを主にやっているところである(A・サンジェではない!)。三方ガラス張りの比較的広い店だが、展示しているのは4,5台。ところが、その組み付けセンスの良さ、しばらく見入っていた事がある。イタリア中部でもそんな店があった。ウインドウには一台しか置いていない。それにジャージがさりげなくかけてある。たったそれだけである。見たとたん戦慄を覚えた。そのセンス、イタリアならではのものである。入ってみると太ったオヤジが一人、外から眺めていたのを見られていたらしい。まさか、このオヤジが?と思って聞くと、うなづいた。人は見かけによらないものである。昼間っからワイン片手の商売である。もちろん、話しがはずんだ。しかし、帰って考えると何も買っていない。思い出だけが残っている。趣味の世界っていいなあと思う瞬間である。


 有名選手が乗った自転車でも、いい組み付けをしてると感じるときがある。プロのメカニックがやっているのだから当たり前の話しだと思われるかもしれないが、強い選手が乗ると更に迫力が増す。これなどは組みつけのセンスだけでなく、それに選手の乗りこなすセンスが加味されたものだと思う。

第15回へ続く...

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