カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第100回

清ちゃんのコレクション(その16)カンパニョロ レコードハブ



 今回、100回目となる。そろそろご神体発表と思っていた方もおられるだろうが、期待を裏切ってしまった。実はまだ、お宝までは到達できないでいる。その手前でいくつかの懐かしいパーツや用品も出てきた。そのうち、涼しくなったら奥まで捜索してみようと考えている。それにしても100回である。よくもまあ、これまで続いてきたものだと、我ながら呆れている。これも、これを読んでおられる皆さんのおかげだと感謝している。



 さてさて、今回はカンパニョロのハブである。昔、自転車に目覚めた頃、アルミ製のハブは高嶺の華だった。当時はアルミハブといえば、アトムやノルマンディのハブしかなく、国産のものはフランジだけアルミといった継ぎハブが主流で、やっと一体ものが出てきた頃だった。今でこそ、トラックレースでしか見かけることのないラージフランジハブだが、この頃はロードもツーリングも高級車はラージフランジハブがお決まりだった。



 あこがれのラージフランジを得るのは目覚めてから、しばらくした頃である。他のハブと比べてもカンパニョロの6つ穴は美しかった。車輪にすると、更に美しさに磨きがかかった。この頃、カンパニョロのハブを触った人だけにしか分からないと思うが、その回転の素晴らしさは特筆すべきものだった。アトムやノルマンディのハブとは全く別ものだった。そのヌルッとした感触はそれまで味わったことのないものだった。



 少しくらいゴリゴリしていても自転車の走行には全く関係ない。回転部の抵抗なんて、微々たるものである。それは分かっているのだが、精神的には違う。レースをやっている人だと、他の選手より滑らかな機材を使っていることで優位性を保てる。趣味の人でも信頼感を持てる。持ったまま軸を回すのと、実際に負荷をかけて回すのでは回転が違ってくる。ただ、同社のだけはそうではないという気になる。



 カンパニョロの回転の素晴らしさはその材質、管理、加工技術にある。鋼球の材質はスェーデン鋼、最良の素材である。そのため、戦時中はナチス率いるドイツ軍がいち早く手を伸ばした事でも有名である。ベアリングのSKFも北欧である。そんな良い素材で作られていても、鋼球には、ばらつきはある。同じロットで作られていてもである。当時、カンパニョロは工場を日本人に見せていなかった。それでも70年代後半になると、数人の日本人にも工場見学をさせている。



 そんな人達から聞いた話では、同社では一個、一個、鋼球をデジタルの量りにかけ選別し、極力ばらつきの少ないロットで組立にまわしていると聞いた。玉押しやワンについても同様の厳しい管理で製造されている。変形の少ないワッシャ一つ見てもそれは理解できる。ワンは本体から外すとわかるが、円筒形のものからの削り出しである。重量的には不利かもしれないが、変形量は他社のプレスものとは比べようもない。おまけに裏には刻印までしてある。圧入した部分なんて、誰も見たりしない。そんな所まで神経を使って作られている。



 今、改めて見ていても当時の息吹が聞こえる。環付きのナット、ストレートなレバーは時代を感じさせるが、その回転は未だに健在である。これで、もう一度車輪を組んでみようかなという気になってきた。

第101回へ続く...

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