カガワの自転車
清ちゃんの
オーバーホール日記



第45回

清ちゃんのつぶやき(その36)夏(2)



 毎日、暑い日が続いている。このところ、欲求不満である。というのも、自転車に乗れないのである。休みは週一回あるものの、仕事に出なければならない日が続いている。今年、1月、別府に中学時代の友人がいて、やまなみ道路を今、走れるか?等の話しになった。昔だったら何の事もない、ふらっと走っていたコースである。今はというと、自信がない。徐々にトレーニングしていけば行けるだろうと思っていたが、春需以降、人事異動で店を変わってからは休みにも社用が入ることも多く、私的用事も入ったりで、なかなか走りにも行けない。



 夏の暑い日に走るのは好きである。最近は昔の事をよく思い出す。車で走っていると気がつかないが、田舎道での田んぼからの青臭い匂い。この匂い、稲穂が太陽からの恵みを受け、一生懸命、緑を濃くしている季節ならではの匂いである。中学や高校時代はツーリングばかりだった。日帰りサイクリングから1泊旅行、2泊旅行、それが3泊、1週間となり、だんだん歯止めがきかなくなってきたりもした。そんな事を思い出す。



 くそ暑い中の合宿やクラブランもなつかしい。皆、暑さでもうろうとしながらも走っていた。帰り着いた後、どこをどう走ってきたのか誰も覚えていないという笑い話もあった。今、考えると不思議だが、昔はボトルは一本しか付けられなかった。この一本でよく走っていられたものである。ただ、コンビニはなかったが、おばあさん一人でやっているような店はあちこちにあった。そこで水をもらったり、浴びたりさせてもらっていた。



 今の新しい道は車で走る事を基準に作られているが、昔の道は旅人が歩いて行くことを基に作られていた。そのため、木陰で湧き水があるという所がたくさんあった。ちゃんと柄杓も置かれてあり、涼しさを味わえた。熊本に来た当時も御船から矢部に向かう途中や砥用から五木に向かう途中にそんな所があったが、新しい道ができたり、改修工事で消えていった。昔の人の知恵や人情までもが、新しい道が完成するたびに失われていくような気がする。



 そんな昔の事を思い出すと同時に、それ以外の自転車に直接関わる事も誰かに伝えていかねばならないのではないかとも考えている。今、NC誌上で長谷川弘氏が「私と自転車」という事で連載されておられるが、同じ考えだと思う。氏の辿ってこられた経験や知識を読むとそれらが伝わってくる。私も諸先輩からいろんな話を聞いてきた。また、部品メーカーにいたこともあり、情報は多かった。もちろん、話せない事もある。企業秘密や誰かに迷惑を及ぼす事もある。それ以外で今、残しておかなければならない事もある。前回のブリヂストンがオートバイを作っていた事、少し年輩の人でさえ忘れている。機会をみて、書いていくようにしたい。

第46回へ続く...

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